おいちゃん

劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライトのおいちゃんのレビュー・感想・評価

4.2
TVアニメーションの続編である完全新作劇場版。
卒業を控えた学生たちの不安と成長をアニメならではの舞台装置で煌びやかに魅せる圧倒的な劇場体験。
メタファーを多用し考察しがいのある作品と思われるが、描かれる物語は至極シンプル。
普遍的な物語であるが、観客を圧倒する高密度な情報の奔流で魅せ続ける怒涛の120分。
突拍子のない画面でも描かれる感情が共感できるものだから見れる。(という意味ではやはりエヴァに近い)
「劇場」という場所も効果的に活きており、日本のアニメーション作品のジャンルの豊かさに感動する。

後半の1時間はずっとレヴューシーンという構成が凄まじい。
ワイドスクリーンで見る迫力の殺陣や、エフェクトが芝居する作画は最高だった。(特に真矢クロのワイヤーアクション一連)

気持ちを歌い上げ歌詞が台詞を兼ねるのがミュージカル映画だが、そこに芝居の要素も取り込まれた「歌劇」が巧みな物語展開を見せてくれる。
そもそも芝居であるアニメ作品の中に「台詞」と「本心」の二つが入り混じる事で生まれる構造もまた面白い。
何故か時々挟まる「殺してみせろよ!」「あーあ泣いちゃった」「私が一番綺麗だ!!」「すべての観客は私を見るべき!」などの強すぎる言葉はほとんどヤンキーマンガである。
今回も観る者と観られる者を自覚的にさせる二層展開の仕掛けで観客を映画に巻き込み、アニメでありながら舞台である「スタァライト」らしさをしっかり見せてくれた。

本気度の高いデコトラと昭和歌謡に乗せた痴情の絡れ、まさかのオリンピック要素(お前もか)、マッドマックスのパロディ(ガチ)も織り交ぜた学園青春群像劇は美しく幕を下ろしながらも、観客が望む限り舞台は続くという強い意志を感じる素晴らしい完結編だった。
テレビではあまり主軸にならなかった主人公華恋の内面が描かれるクライマックスはまさに我々の待ち望んだものだろう。

ライバル、友情、愛、あらゆる百合の関係性が波状攻撃でフルボッコにしてくる暴力映画でもある。
古川知宏監督への感謝と、師匠と呼べるであろう幾原監督への称賛で眠れない日々が続きそうだ。

私たちはもう舞台の上。
肝に銘じて生きていきたい。
おいちゃん

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