リミナ

竜とそばかすの姫のリミナのネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

細田守監督の原点回帰であり総決算とも呼べる作品。

仮想空間を題材とする上で一番のネックとなる『サマーウォーズ』の存在だが、主に匿名性の扱い方で差別化が図れていた印象。著名人に関わらず一般人、とりわけ劇中においてずっと竜に対して「あなたは誰?」と投げかけてきたベルが自らの素性を明かす展開は印象的。これもYouTuberをはじめとした若者や大人を問わずにネット上でも素顔を晒して交流する時代の流れを踏まえてアップデートされた故なんだろうなと。それでいてリスク面やネットリンチにも触れているのは抜かりがない。

本作では、家族(サマーウォーズ、未来のミライ)、同級生(時をかける少女)、仲間(デジモン、ワンピース)、異種間(おおかみこどもの雨と雪、バケモノの子)といった過去作で描いてきた他者との関係性がまとめて描かれる。ただ、それらの人物は問題に対して解決の糸口を与えることがほとんど。あくまで竜とベルの個と個の繋がりに焦点を当てたようにも見える。

映像面では、自然豊かな舞台に青山浩行氏のキャラクターデザイン・作画監督といった絵柄、背景を大きく見せる同ポジションの構図、FIXの長回し、PANでの場面転換といった各要素は相変わらずでもはや安心感すらある。
しかしながら、見せ場となるシーンの大半はCGで表現された<U>パートであり、作画が目当てだと物足りさを感じてしまうのが正直なところ。過去作では仮想空間でも作画のシーンがあっただけ余計に。
また、本作の注目すべき点である若手アーティストを中心とした音楽面で楽曲自体は良いのだが、いざ映像になるとイマイチ乗れなかった(この辺りは個人的にCGアニメーションやミュージカルが好みでないのが起因しているのかもしれない)。

演出面では、河川敷の遊歩道を一人歩いていたすずがラストには大勢と川沿いの石の上を歩いていたのが、母の死や困難を乗り越えた証のように思えて良かった。

この総決算とも言うべき作品が世に出たことで、次回作がどんな題材のものになるのか楽しみ。自分にとってデジモンからほぼリアルタイムで追ってきた監督なので何だかんだ期待したくなる心情。
リミナ

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