ヤマネ

竜とそばかすの姫のヤマネのレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.6
映画館で観ることが出来て良かったと思います。それは間違いありません。
しかし、観賞後にモヤモヤした気持ちが残る、そんな映画でした。
最近の細田作品は毎回そんな感じです。

オープニングは鳥肌たちました。
歌唱力というか、歌の凄さを感じられないと、そもそもこの映画は成立しないと思うのですが、主役の方は素晴らしかったです。

仮想空間と現実の対比、みたいなテーマは細田作品には毎回のように出てきますが、今作は非常にスケールが小さくて物語としてチグハグな印象を受けました。
50億人がいる感じがまったくしないし、主人公たち以外はモブです。
竜の正体も分かったところで驚きもないし、辛い境遇だとは思うけど、あれだけの超現実的な仮想空間を騒がせる存在だとは思えなかった。
Uの設定を広げてすぎてしまって、テーマがボヤけてしまった印象を受けました。

主人公が会いに行きますが、兄弟のその後が描かれるわけでもなく、主人公は自分だけスッキリとした顔で前向きになっているのも、なんだかモヤモヤしました。結局は自分自身のために行動していたように感じてしまいました。

最近の細田作品は、主人公がわりと偏った倫理観によって行動して、結果的に自己完結してしまうものが多い気がします。
それが細田さんの作風もあって、爽やかに感動的に描かれていることに違和感を感じてしまいます。このへんは好みだとも思いますが。

大変な癖があったり、偏った価値観を描いていたとしても、なんだか人間の持つ普遍性や高尚さを感じさせる宮崎駿、高畑勲の作品って凄いんだなと改めて感じました。

色々と書きましたが、
アニメーション映画としては大きなスクリーンで見る価値はあると思える作品ではありました。
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