スピードスター

竜とそばかすの姫のスピードスターのレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
2.1
すいませーん私には無理でしたー!

鳥肌ものの歌唱パートと圧倒的映像美は前評判通りの素晴らしさでしたが、インターネット内の仮想空間「U」の存在意義にいまいち納得できず、モヤモヤを抱えながら無感情でフィニッシュでございました。

本作の舞台である仮想空間「U」の存在がとにかく謎。
動画配信サービスやLINEっぽいもの、ビデオ通話サービスは別にあるみたいだし、何が楽しくて高価そうな認証デバイスを購入してまで50億人もの人々がアカウント登録してるのかがよく分からなかったです。

これ以上このモヤモヤをネタバレなしで語るのは難しいので、以下ネタバレです。未視聴の方はご注意を!
そしてこの作品が好きな方は閲覧をお控えください…。










もっと語りたい「U」の世界。

知性を司る5人の賢者が創造したとか恥ずかしいからやめて。
『レディ・プレイヤー1』意識してるみたいだけど、あちらはゲームの世界だから成立してるので。

あとボディシェアリングとか言うすごい技術使って身体的特徴をアバターに投影するのに顔は画像から別人のを拝借できちゃうのがしょーもなくて好きです(笑)
でもソバカスだけは外せないって何基準なんでしょう?

ラストの合唱シーンもオーディエンス自身がいきなり光りだしたり、素顔を晒した主人公がまたベルに戻ったり、派手なクジラが場を盛り上げたりと、どんな条件で発動するのか分からない謎システム。
単純に「映像的に映えるから」って言う制作側の意図が見え見えで雑に感じました。 
そう。とにかく「U」の設定がメチャクチャ雑なんです。

また、ベルが超絶歌唱力でバズり、ユーザー達は彼女の話題で持ちきり。しかし皆の1番のトピックは「彼女は誰?何者?」ってどういう事?
ベルが竜と出会った時も「あなたは誰?」
そこ重要?
有名無名関係なく能力のある人がその力を発揮できるのがインターネットや仮想世界のメリットではないの?

無能な賢者(運営?)のお陰で活躍する自警団の「さいきょうのぶき」が個人情報を晒すツール(笑)
仮想空間にいるのにリアルな個人情報を暴く事に躍起になる矛盾。
現実のネット世界のメタファーなんでしょうけど、ブロックとかバンとか無い世界なのかな?
悪者どころか注目を浴びただけで何十億人から個人情報を探られる恐怖。
現実のネットの方が健全ですね。

そして、まあとにかく小さい世界。
話が日本国内だけで完結してる!
50億人がアカウント登録する世界的ネットサービスなのに小っちぇー世界ですね!
宇宙を舞台に家族で喧嘩してるスターウォーズ並みの小ささですわ。
モブキャラで外国人をちょいちょい挟んでいたけど、それがこの世界の薄っぺらさ、安っぽさをより強調していましたね。

そして50億人の中から1人を探し出す過程が薄寒い。でかいモニターにウインドウいっぱい並べて、「聞こえる!」って(笑)
劇場内で吹き出してしまったではないか(周りの方すいませんでした)

そして散々語られている本作の問題点。
DV加害者がいる場所に女子高生一人で乗り込む場面。

せめて忍くんが一緒に行くべきでしょ!
その前にその手に持ってる端末で110にダイヤルしましょーよ!
暴力を現認した時点で通報すべきは児童相談所じゃなくて警察ですよ!

危険性を承知しながら未成年の女子を送り出し、案の定顔に傷を負って帰ってきた鈴に対し忍くんは「もう見守らなくてもいいねー」って…。
お前何もしてねーから!
私がすずの父親だったら東京に行かせたヤツら全員整列させて1人ずつ張り倒しますよ(暴力ダメ絶対)

リアルな個人情報を渇望する仮想空間(笑)で世界中の注目を集める中素顔を晒したすずのこれからを思うと、『サマーウォーズ』の様な大団円とはならないのではないか。
忍くんが守るべきは、すずのこれからなんじゃないか。

そして適当な決意表明でお茶を濁されたDV被害者の未来は…。

そんな事を考えながらエンディングを迎えました。もちろん無表情で。
うーん。伝えたい事は分からなくはないけど、友人の恋愛模様や父との確執など、余計なエピソードが多くて散らかっちゃった印象でした。

『サマーウォーズ』で薄々感じてはいましたが、細田監督はインターネットをファンタジーや魔法の世界だと思ってるんじゃないでしょうか?
私が言うまでもないですが、インターネットとは現実と地続きにあるツールで、それ以上でも以下でもありません。



長くなったので最後にします!
結論。細田監督は獣好き(笑)