松井の天井直撃ホームラン

けったいな町医者の松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

けったいな町医者(2021年製作の映画)
-
☆☆☆★★★(エンドクレジット後のドラマに★1つ献上したい)

昨日観た韓国映画の『夏時間』と、先週に観た『痛くない死に方』には大いに心を動かされた。
※ 1 当初は鑑賞予定になかったこの作品だったのですが。『痛く…』とは一対をなす作品だと思い、どうしても観なければとの思いが日々強くなって行った。

多くの著作を持つ長尾氏本人の、患者さんに寄り添う診療の在り方にはとても感銘を受ける。
だが反面で、その【クセ】が強すぎる個性には…もしも一緒に仕事をする仲間としてだったなら、一歩引いてしまうかもしれない。
それくらいに【大クセ】な町医者だから💧

作品本編には最初に登場する老婆が、本編中に何度か登場するが、時と共に体力が無くなり…と。ドキュメンタリーとしては何となく予想は出来る進み方でした。
終末医療は、延々と抗う【死】との闘いなだけに。観ていても「一体どこに最後の終着点を見出すのか?」との思いが拭えませんでした。

長尾医師は、その想いを患者さんに対して〝 食べる事 〟であり〝 笑う事 〟を推奨します。
(後、もう1〜2っ有ったかもしれない)
そして長尾医師本人は、患者さんに対してとにかく〝 喋る事 〟を止めない医師。
その【大クセ】の喋りで、多くの患者さんから信頼を勝ち得ているのが解る。
まあ!【大クセ】ゆえに、1人紅白歌合戦はちょっと訳が分からない部分もありますけれど、、、(^^;)

個人的な体験談として。大病院だと、こちらから多くの疑問・意見を言わないと、医師側からのハッキリとした意見が帰って来ない…との記憶があります。
必要な検査であったり、申請書等のお願いも叶わず通り辛かった経験をしました。
※ 2 その為に、何度も何度も病院へ通い、かなりの時間と労力もロスしました。


当たり前の事なのですが、脚本の有る劇映画と違い。ドキュメンタリーは1分先に何が起こるか分からない。
スクリーンを観ながら、映画の終着点はどこに?と思いながら。「いや!いくらなんでも自分の歌はないだろ?」との思いもありつつ…。
それだけに、中盤以降は正直に言って多少退屈感が有ったのが本音。
それを一気に捲った感が有るのが、最後に起こったドラマでした。

富士子さんへのラブレターと ※ 3 この最後のドラマは、完全に涙腺が崩壊してしまったのが事実。
この日も舞台挨拶があり、昨夜も1人最期を看取り。この後、急いで帰ってもう1人緊急で診療する患者さんが居るとの事。

この長尾医師の持論による〝 枯らしてあげる 〟との考え方。
色々と意見はあるでしょうが「こんな考えもあるのか!」と、この考え方・知識を、一つの終末医療の在り方として得るのも重要な事なのでは?…と思いました。

そして終末医療とは、まさにゴールのないマラソンを延々と走っている様なものだなあ〜と。


2021年2月28日 シネスイッチ銀座2






※ 1 『痛くない死に方』が良かったので、改めて天皇誕生日に本作品を観る為に映画館へ向かう。
上映直前に何とか間に合うも、そこには50人以上のチケットを買う人の列が!
よくよく考えたら、全て『痛くない死に方』のお客さんだったのでしょう。もう『けったい…』の上映時間が迫っているが、どう見ても発券には20分以上はかかる。
一瞬、係の人に話しをすれば「じゃあ受付で発券します」とは言って貰えそう…とは思いつつ。
わざわざ並んでいる人を押し退けて、、、と言った事がなかなか出来なかった(-.-;)
実際に並んでいたら「何?あの人!」って思っちゃうものなあ〜( ;´Д`)


※ 2 昨年末に末期癌に侵され亡くなった私の母親には、こちらから依頼しなかった事もあり一切の薬も貰えなかった。そこは「痛いので痛み止めの薬を下さい!」と言うべきだったのだろうか?セカンドオピニオンを依頼した大病院の医師は「この状況で一切の薬を出さないのはあり得ない!」とは言われた。


※ 3 我が母親の最期もまさにこれと同じ。
日曜日の朝5時半に「心肺停止です。今すぐ来て下さい!」との電話で叩き起こされ急いで病院へ行くと、映画と全く同じ光景の心臓マッサージ中でした。但し、既に脈も心臓も動いてはいませんでした。
当直の医師から「脈はありません。心臓も止まっています。眼球にも反応がありません。以上の事から死亡したと言って良いかと思いますがいかがでしょうか?」

返す言葉は1つしかありません。

「分かりました。ありがとうございました。」

それ以上の言葉は言えなかった。