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新 デコトラのシュウ 鷲の教授のレビュー・感想・評価

新 デコトラのシュウ 鷲(2021年製作の映画)
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シリーズは1作目しか観ていないけれど。
多少の設定は違っていても、ほぼほぼ同じなのにもちょっと唖然とする。

タイトルにある「デコトラ」も今回も、冒頭しか本格的には出てこない。
デコトラにこだわりはないので気にしないが、良くも悪くも、作り手すらその辺りを気にしていない意識の良し悪しは本作の全編に亘って付き纏っている。

本作を、大きな期待をしながら観る観客というのは、ほぼほぼいないと思われる。
僕も全く「クオリティ」は求めずに観ていた。
その割に、はっきりと「面白い」と感じた作品ではある。

あまりにも中身のないストーリーに対して、本作はあまりにも過剰に、もはやウケすら狙っていない角度でギャグを仕込んでくるのだが、あまりにもくだらなく、またベタで、しかし執拗に、とにかく執拗に繰り返されるので、はからずもそこに「意図」を見出してしまうので、とても疲れてしまうが、一方で楽しくもなってしまう。

序盤の意味不明なダンス対決。
オレオレ詐欺に関するやりとり。
つけ麺屋でのやりとり、賭場アトラクションから、終盤の病院でのやりとりまで。 
かなりの力技のみで、強引なまでに笑わせようとしてくる。
ベタを貫き通して、もはやシュールになり、カオスになり。
人物の感情をそっちのけ、物語であることも忘れた思い切った演出にはドン引きする気持ちと、変な恍惚感がある。

そして、その中に通底しているのが「東映オマージュ」であり、どことなくコロナ禍の時代、生きづらさの中で、括弧つきの「エンターテイメント」の力を示そうと気概らしきものは強く感じられる。
だから、決して嫌いにはなれず、素直に面白いと思ってしまう。

ただ…残念というか。ハッキリとこれまでの楽しさを完全に消失させるほどに「ラスト」は完全にアウトである。
ポリティカル・コレクトレス。
というモノサシの是非はそこまで強く主張しなくても。そもそもある種の「正しさ」を指標に映画の良し悪しを定義していくのみの論調には否定的ではあるけれど、だからといって、先に述べた熱量や勢いで「これまで許されていた」にどっぷりと甘えてジェンダー「ネタ」を扱う神経。
そして、それは「ネタ」なのではなく「差別」であるし、アイデンティティを中傷しているだけであるという感覚のなさ。

どことなく、それまでの不謹慎な笑いも含めて「意図されたもの」として、そういうラインのものを敢えて描写していると許容していたものも。
ラストにおける明確な「差別的」とされる意識の低さを露呈させてしまい、結局は「古き良き」からは何ひとつ脱却できない「層」のファンタジーとして補完されていく危うさだけは看過できない。
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