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クライモリのhorahukiのレビュー・感想・評価

クライモリ(2021年製作の映画)
3.6
『クライモリ』meets フォークホラー!

あの近親交配人食いミュータント家族が暴れ回る『クライモリ』のリブート。敵も味方も善悪のステレオタイプを取り払った現代的アップデートが施されていることに驚き!もうコレ私たちが知ってる『クライモリ』じゃない!!過去作との繋がりは一切ないので、コレから見ても問題なしです👍

スラッシャーのテンプレを綺麗になぞった(なぞり過ぎた)一作目と同じ脚本家ながら、その全てにおいてテンプレから逸脱させた力作。冒頭で何かしらの血みどろ事件→本編スタートを徹底し、やたらとケタケタ笑ってヘラヘラしてるミュータントたちがチャラい若者たちを殺害→食人。そんなシリーズの「らしさ」を全部取っ払った、バージニア州版『ミッドサマー』になってた😂脚本は2017年のものだけど、演出面で間違いなく意識していると思う。

このシリーズは二作目の『デッドエンド』は好きだけど、他があんまり好きじゃなくて…😅個性があるように見せかけた無個性軍団が、同じくテンプレ的無個性若者たち(囚人とかもいたけど)を殺傷していく記号化されすぎた展開に毎回眠くなっちゃってたんで、本作のような改変は個人的には嬉しい!監督曰く『インディジョーンズ魔宮の伝説』からアイデアを拝借してるらしい…あと『グリーンルーム』とか…私的にはそうかな?って感じだけど笑

無個性軍団に人間性を付与するのは、前作『ザ・ドメスティックス』で、色んな創作物で無個性キャラとして登場しがちな「オデ…オマエ…食う!」的な脳筋巨漢野郎にも人間性と「無個性の檻」からの解放を描いた監督の「らしさ」でしょう。巨漢に限らず、『ザ・ドメスティックス』では主要キャラの二面性・隠れた顔によってスリルを生み出し、それは集団における価値観・教義の乱立という意味でもそうだし、子どもの扱い方の点でも本作に踏襲されている気がする。

わざとらしく片面的な政治色が盛り込まれた脚本の中でも、そこに重きを置かずに振り回し撹乱させることで脚本に抵抗して政治色を空転させる一方で、内面・主義主張の二面性や裏側に目を向けることを徹底、そして外観によるレッテル貼り・外圧による同化を批判した先にある「個」としての選択と責任へと落とし込むあたり凄く良かったと思う。

過去作にあったような、人体を真っ二つにしたり三等分(何ていうの?真っ三つ?)にしたり、両手両足縛って宙吊り→ゆっくりじっくり四肢切断したり、生きながらにして少しずつ肉体を切り取ってオイルフォンデュで食べたりするような直接的残虐シーンは本作ではほとんどないながらも、「死ぬ」ということに対して観客の感情を作り上げるのがさり気なく的確で、殺害シーンに一切の感情の変動が起こらなかった過去作群とは一線を画していると思う。

散々な評判だけど、割と良かったんじゃない??しっかり『Wrong Turn』もしてたし。アプローチは真逆ながら、シリーズの中でも『デッドエンド』と双璧な気がする!でも旧来ファン的には絶対に許せないリブートだとは思う😂
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