豪華できらびやかで圧倒的に美しいロシア映画。まるでディズニー。大臣のご令嬢と貧しい青年、身分違いの二人の恋の行方はいかに?
ロシア革命以前の貴族階級のゴージャスな暮らしとサンクトペテルブルクの街の美しさ。CGを使っているけど、生き生きとしたカメラワークで実写なのが凄い。ロシアの底力を見せつけられた感じ。実際にサンペクトベルクの街中や運河に青い板が張り巡らされ、市民が驚いたという。
冬の街は運河が氷り、氷上市が立ち、皆スケートでスイスイ滑る。そのスピード感が楽しい。
ディズニーとの違いは王子さまを夢見て待たず、だからといってボーイッシュな女性でもなく、夢見るのは科学者となって、女性に高等教育の機会を広めること。ロシアらしいといえばロシアらしく、より現実的で共感しやすい設定になっている。
青年は貧しさゆえにスリ仲間に入り徒党を組んでスケートの技でブルジョワを狙う。そんな出逢うはずのない二人が出逢ってしまった。
タイタニックを彷彿させ、逆シンデレラのようでもあり、ロミオとジュリエットのようでもある。既視感あるストーリーだが、映像の美しさ、スケートによるスピード感、アクションシーン、とても楽しかった。大きなスクリーンで観たいと思った。Netflixオリジナルの初ロシア作品。
貴族階級のいたロシアならではの華麗で詳細な演出と、多民族から成るロシアの豊かな文化も(今や微妙に思いながらも)楽しめた。
サンペクトベルクの運河って実際に冬に市が立つのかな。
ロシア名物、冬の水垢離もあった。
冒頭のお菓子屋さんのシーンからワクワク楽しい。
ミハイル・ロクシン監督は、アメリカ生まれのロシア育ち。五歳のとき、ガンの研究者でありアメリカ人だった父親が、ロシアに亡命しロシアの市民権を得る。きっかけはアメリカでの社会主義者の迫害によるという。wikipediaでは父親がアメリカで解雇された際にロシアが全面的に支援し亡命させたとある。その後、父親はアメリカを非難する本を出版。スノーデンの亡命を支持するとも発言している。
アメリカのカルチャーを身につけたが、社会主義を信条にしてロシアへ亡命した父親の価値観の影響が、見ようによっては透けてみえる作品。
また、すっかり忘れていたロシア革命を思い出させてくれた作品でもある。貴族等ブルジョワが富を抱え貧富の差が大きかった帝政ロシアが市民平等を謳う社会主義国のソヴィエトに変わる、その動乱の機運が高まってきた時代背景が描かれていた。スリ仲間達が資本論を読み、若手将校が自由主義を口にする。女性は高等教育を求め自立し、身分違いの恋は叶うと信じている。
ロシアが自国を市民(労働)階級に解放して、民族差別、女性差別をせず、プロフェッショナルになることに重きをおいていることが読み取れる。
比べてみれば、ディズニーでは政治的セリフがないこと、富裕層を非難しないことに気づかされた。
西側から観ての違いがあらためて浮き彫りになったのも面白かった。