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MONSOON/モンスーンのchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

MONSOON/モンスーン(2020年製作の映画)
3.5
まあ要はGrindr好きのお兄さんが遠い祖国で男の人を物色しながら自分のアイデンティティを探すお話です(?)。WEEKENDをめちゃくちゃ真似しとる。というとあのヘンリー・ゴールディングがあんなことやこんなことで大変なことになっちゃうのかと楽しみにされる女性も多いかと思いますが、そういう期待はしないほうがいいですというのは後述します。

まるでNHKで流れるドキュメンタリーをみているようでめちゃくちゃリアル。映像も言動も展開も映画的なものはない。通話も相手の声は聞こえないなど徹底したドキュメンタリータッチが演出されています。WEEKENDはがっつり盛大に沁みる感じですが、こちらは静かーに沁みる系です。

6歳の時に両親とともに難民としてベトナムからイギリスに渡ったキットは、両親の遺灰を納める場所を探すために弟家族より一足お先に両親の故郷サイゴンを30年ぶりに訪れます。子供の頃の友人だったり新しいお友達だったり。そこで出会った同世代の人々を通して自分の人生やアイデンティティについて考えていくことになります。彼らとのふれあいから、キットはそのままベトナムにいたらそうであったはずの自分の姿を想像し、人生について想いを馳せたことでしょう。

まあ最初のサイゴンで出会い系アプリに手を出すのは、それまでのあれこれからそりゃあ寂しかったんだろうなぁってよくわかる。いや、でもハノイで手出すの早っ。いや、そういえばハノイへ向かう移動中でも色目を... あれはあの後確実に車内でいたしとるな(笑)。 30代独身男だとこんなもん?ちょっとは見習ったほうがいいんしょうか... 出会う男性の素性は重要なポイント。彼らとの関係を通してキットがイギリスでもベトナムでも自分はアウトサイダーなんだと感じたこと、そして彼が心から分かり合える人をずっと求めていたことがわかります。一般的には仕事もプライベートもノッてくるお年頃でしょうか。いや、ノッてるからこそ少し立ち止まってこのまま進んでいいのか考えたくなる時期でもあります。実はちょっと一時停止中のキットの人生。淡々としているようでジーンとしましたね。

さて女性陣お待ちかねのシーンについてです。基本はWEEKENDを真似した映画なので濃厚に描きたかった感はよく伝わってきます。が、やはりヘンリー・ゴールディング的にはNGだったんでしょうね。「はい、ここまでしかお見せ出来ません!!」、めちゃくちゃ不自然です。具体的には「男と一緒にベッドはダメ絶対。どうしても彼がベッドにいるのを撮りたいなら相手は外で同じ画面には映らないようにしてね。脱ぐのは上半身まででできるだけ映らないように、いや、それでもなあ、なるべく脱ぐのは相手だけにしといてくれる?引き受けた以上キスと胸タッチはしょうがないか... あ、でも彼が触られるのはダメだよ。彼のイメージと今後の役に響くでしょ。」とブツクサ言ってるマネージャーの声が聞こえてくるようです。こんなんならそういうシーンは完全になしでもこの映画何ら問題なかったはず... 今度から配役を決める前にそこらへんはお互いよく確認してね。

彼がこの後どんな人生を送っていくにしてもこの旅が彼の人生にとって大切な時間を提供してくれたことは間違いない。心から「幸せな人生を送ってね」と声を掛けたくなりました。よい映画だったと思います。