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MONSOON/モンスーンのEDDIEのレビュー・感想・評価

MONSOON/モンスーン(2020年製作の映画)
3.8
30年ぶりの故郷への帰郷。イギリス文化で育ちベトナムを懐かしむ感覚は薄い。今一度自分の存在意義やアイデンティティを問う自分探しの物語。印象的なカメラワークが本作の肝で、主人公の孤独感を巧みに演出。静かな作風ながら画面に釘付けに。

〈ポイント〉
・各シーンを印象付ける巧みなカメラワーク
・疎外感や孤独感を表情だけで悟らせるヘンリー・ゴールディングの好演

〈雑感〉
ヘンリー・ゴールディングってカッコいいですね〜。
それにしても前評判があまり聴こえてこないこの作品。思った以上の良作でした。
自分は全然知らなかったんですが、日本版ポスターは本来男性が2名写っていたのに、ヘンリー・ゴールディングだけにするなど、公開前は物議を醸したみたいですね。
話題を呼ぶための措置であれば策士かもしれませんが、それほど話題も呼べていないかなぁと。

とはいえ、作品自体はかなり上質。
何よりも冒頭のカットから撮影が異次元に素晴らしいことがこの先の物語をワクワクさせるのに一役買っています。
同じカットの中でも下から上に上がって長回しで見せるところが多用されていましたが、この目で見て楽しめる撮影の工夫は随所に見られました。
撮影は『プロミシング・ヤング・ウーマン』のベンジャミン・クラカンだったようで。なるほど、納得の腕前というわけですね。

物語としては母の死をきっかけに、生まれ故郷に30年ぶりに戻ってくるキットが主人公。
育ちはイギリスで、ベトナムの文化や言葉はほとんど覚えていません。
さらに彼自身は人には大っぴらにできない秘密もあり(ここがポスターと関連する部分)、自分のアイデンティティや居場所を探し求めるというのが本作のミッションになってきます。
彼はベトナムで完全に他所者・場違いな雰囲気で、なかなかその場に馴染めません。
居心地の悪さは解消されず、それでも母の遺灰を埋葬するための場所を探すためにベトナムの自分の所縁の地を旅してまわるわけですね。

こんな鬱屈としたベトナム滞在をしていたからこそ、ラストシーンがとても印象的で救われたように感じて特別な映画と感じました。

〈キャスト〉
キット(ヘンリー・ゴールディング)
ルイス(パーカー・ソーヤーズ)
リン(モリー・ハリス)
リー(デビッド・トラン)

※2022年新作映画13本目
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