南米のある国に暮らすホロコーストサバイバーのユダヤ人の老人が、隣に引っ越してきたドイツ系移民の男をヒトラーでは？と疑う。
主人公は一度だけヒトラーと直接会ったことがあり、顔を一目見て確信する。
だがイスラエル大使館に駆け込んでも、単なる印象でしょ？と相手にされない。
意地になった主人公は、カメラや資料を買い集め、隣家を昼夜監視して証拠を集めはじめる。
すると確信はどんどん固まって行くのだが、チェスという共通の趣味から、なぜだかだんだん仲良くなってしまう。
南米は敗戦後に多くのナチス戦犯が逃亡しており、実はヒトラーも死んでおらず、南米に逃げ延びたと言う長年囁かれる噂から想像力を広げていった作品だが、さもありなんと言うリアリティ。
隣人の正体に関してはネタバレなので自粛するが、これもあるまことしやかな噂をうまく使っている。
これは真実と嘘をモチーフに加害者と被害者の関係を描いた寓話で、自分の認識をぶつけられなくなった時、想いをどこへ持っていけばいいのか？という話でもある。
なかなかによく出来た、面白い佳作だった
