Jun潤

ホロコーストの罪人のJun潤のレビュー・感想・評価

ホロコーストの罪人(2020年製作の映画)
3.7
2021.09.06

ホロコースト作品案件第3弾。
収容所の現実と逃走劇を描いた「アウシュヴィッツ・レポート」、虐殺後の復讐劇を描いた「復讐者たち」ときて、今作では収容や虐殺などの現実に翻弄されるブラウデ家が群像劇として描かれる。

原題和訳「最大の犯罪」
洋題和訳「裏切り」

ノルウェーでボクサーとして活躍するチャールズは、兄弟のハリー、イサク、そして両親とともに暮らしていた。
ボクシングの試合で勝った後、チャールズはラグンヒルと結婚し幸せの絶頂にいた。
しかし歴史の奔流は彼らを逃さなかった。
突如収容所に連れて行かれるチャールズたち、そこで待っていた理不尽な現実。
残された家族にもまた、ドイツ軍の魔の手が迫っており、捕縛か亡命か、運命の別れ道が目の前に来ていた。
一家を待ち受ける現実とはー。

これは、、個人的に過去2作よりも心に突き刺さりました。
おそらく一家の様子や収容前の生活の描写が丁寧だったこと、より個人にフィーチャーした物語だったことがその要因だったと思いますが、
大きな歴史の流れだけでなく、それに翻弄される普通に暮らしていた一家というのが、より身近に感じられました。

収容所の現実については過去作でも観ていましたが、残された家族については初。
家族を失った悲しみに暮れる間もなく、自分たちにも降りかかるドイツ軍。
戦火が降り注ぎつつある街の様子も相まって徐々に、しかし確実に近づく戦争の足音を感じました。

題材的にスッキリする終わり方でないことは覚悟していましたが、アウシュヴィッツに連行される家族たちの描写で終わり、あとはテロップでブラウデ家のその後について補足。
場面の描写がなかった分辛さも減りはしましたが、作中で描写されていた家族たちに降りかかったのは間違いなく悲劇。
その結末を説明されるのはさすがに辛かったですね…。

果たして最大の犯罪を犯したのは誰だったのか、裏切ったのは誰だったのか。
歴史の一部だけを切り取ってもわからない問題だと思いますし、分かったとしてもそれはすでに歴史の闇の中。
この歴史を知った上で現代に生きる人々にできることはあるのか、もしかして何もできないのではないか。
確実に言えることはこういう作品が制作され、観る人がいることで、起きた事実を繋いでいく流れは絶えないのだと思います。
たとえそれがどんな凄惨な事実を扱った作品だとしても。
Jun潤

Jun潤