マヤーンクローン

セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記のマヤーンクローンのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

仮面ライダーとスーパー戦隊大集合映画お馴染みの絵面てんこ盛りで春を感じるのですが、なかなかの野心作かつ感動的な作品に仕上がっています。
仮面ライダーセイバー=神山飛羽真が物語を紡ぐ小説家という設定を活かし、物語そのものを描くことの是非や理由にまで踏み込むとは!


鈴木福が演じる石ノ森章太郎先生と飛羽真が、物語を作り出す責任と覚悟を導き出すシーンに強く胸を打たれた。
というのも、この一連のシーンはコロナ対策の一環としてセイバーとゼンカイジャーで導入されたアンリアルエンジンを巧みに活用しているのが見どころだ。


このアンリアルエンジン、鳴り物入りで導入されたシステムなのは良かったが、テレビ本編では正直なところ粗が目立つ合成や稚拙な作りが目立ち、首を傾げたくなる点が多々あった。
コロナ禍の中で毎週放送するために採用されたシステム……というのは重々承知とは言え、やはりニチアサの製作スケジュールとは相性が悪かったのか、終盤ともなると一部を除いて使用回数は分かりやすく減った。
では今作ではどうかと言うと、驚くことに上手く演出に落とし込まれている。
ここが特に好きだ。


石ノ森先生が仮面ライダーを描くことを辞めて、『仮面ライダーセイバー』という物語自体が消失した後の世界。
飛羽真や賢人は仮面ライダーではなくなり、ただの一般人に戻る。
一点の汚れもない清潔感に溢れた白いシャツを着こなし、アンリアルエンジンで作られた無機質な部屋で賢人とルナが食卓を囲む。
わざとらしい盛り付けがされた食事などもあわせてとても不気味だけれども、『仮面ライダーセイバー』という虚構の物語から解き放たれた彼らの表情や仕草はとても優しく朗らかで、その対比には頭を殴られたかのような感覚があった。
その後に続く田﨑監督とキャスト一同による渾身の長回しパートも、アンリアルエンジンの異様なCGを舞台演劇の場面転換のように使うアクロバティックなアイデアに脱帽。
「現実から目を背けるな!」と言われ「俺には物語の方が辛い!」と返す飛羽真も印象的。
その後に続く「リバイス」の本編チラ見せも衝撃的だが、今作自体を見ても十二分に衝撃的で満足できる!


「……いや、仮面ライダーの映画何回メタネタやるねん!」と思って見ないのは勿体ない!

『シン・仮面ライダー』『仮面ライダー BLACK SUN』など、50周年を皮切りに時間と予算をかけたライダー実写作品の企画が続々と始動していますが、ニチアサライダーも負けていないと思う。
セイバーとリバイスの冬映画も楽しみ!!