垂直落下式サミング

地獄の花園の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

地獄の花園(2021年製作の映画)
3.7
とある中堅企業のオフィスに、中途採用された元カリスマヤンキーの女性がやってきたことで、社内に存在する武闘派OL勢力が守っていた均衡が崩れて波乱を呼ぶさまを、ごく普通のOLからみた視点で描いている。OLなのにHiGH&LOWがクローズしてビーバップな不良アクション!
『架空OL日記』が予想以上に素晴らしかった脚本のバカリズム。本作でも、独特のひとり芸で培った狂言回しのセンスが光る。ところが、本作のOLたちは気合いの入った髪型に特効服スタイル。「狂犬と大怪獣を下して悪魔がOLの頂点に君臨した」「カタギのOLには別の世界のはなし」など、女の派閥争いをコミカルかつ象徴的に可視化した世界のなかで、ナンセンスな日本語の組み合わせを巧みに操ってくる。
女の子同士がバキバキに殴りあうシーンは、設定が現実離れした出落ち映画らしからぬ真面目なアクションシーンになっていて、スカートが風を切りながらの泥臭くクールな格闘はとてもよかった。
駆け出した主人公の背中から追いかけていって、取り囲む輩たちのあいだをぐるぐると回って、途中スローモーションを挟みながら、上空から見下ろすクレーン(ドローン?)撮影に移行するワンカット。HiGH&LOWでも似たようなことをやっていたが、日本映画だって韓国や香港に負けてないぞと、製作者の頑張りが伝わるパワー系オーソン・ウェルズな名シーン。
派閥争い、通り名持ち、次々とやってくる強者、不良漫画あるあるを一通り並べていくのは楽しかったが、惜しむらくは、史上最強のOLとの荒唐無稽な戦いのあとに、ラストでもう一度徒手空拳の殴り合いのレベルにまで落ちてしまうため、作中の強さインフレに矛盾が生じていて、中盤以降は説得力が弱くなる。
それら火花の飛び交うアクションと、のほほんとした日常シーンの擦り合わせは比較的に上手くいっているが、主人公がやたらと覚めた目線から不良たちの世界に俯瞰視点のツッコミを入れるので、コント的な設定を劇映画向きに落とし込みきれていない感じ。心の内ナレーションと大きな字幕表示、どっちもだと説明的過ぎるなあ。
バカリズムのコントらしい発想力のある目の付けどころと、王道を踏襲しながらのあえての外しみたいなのが、そのまんまストーリードラマに置き換わっているため、熱血を期待しているとまったく違う方向に転がっていってしまう。そういう「らしさ」を楽しめる人向け。