MasaichiYaguchi

戦場のメリークリスマス 4K 修復版のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

4.0
公開時に観て、その後地上波のテレビ放映で観ているが、映画館で再鑑賞するのは38年振りになる。
4K修復版というクリアーな映像で本作を観ると、大島渚監督の世界観や人間観、そして美学に改めて魅せられ、更に主要キャストで出演もしている坂本龍一さんの素晴らしい音楽が終映後も心の中でリフレインして余韻を残す。
ジャンル的には戦争物になるが、戦闘シーンは一切なく、第2次世界大戦中のジャワの日本軍捕虜収容所を舞台に、日本軍人と西洋人捕虜との極限状況下の人間ドラマが相克を交えて繰り広げられていく。
この人間ドラマを演じるのがデビッド・ボウイ、坂本龍一さん、ビートたけしさんという当時としては異色なキャスティングで、坂本龍一さんはその後、本作同様に主要キャストと音楽を担当したベルナルド・ベルトルッチ監督の「ラストエンペラー」という代表作があるが、俳優としての映画は本作が初めてだし、ビートたけしさんも今や「世界のキタノ」となり、監督として俳優として押しも押されぬ存在だが、当時、勿論人気はあったがコメディアンでしかなかった。
本作と設定や内容が似た映画で、第2次世界大戦中の捕虜収容所を舞台に、泰緬鉄道建設を巡り日本人大佐と捕虜となったイギリス軍兵士たちとの対立と交流を描いた「戦場にかける橋」という名作があるが、二つの映画の違いは、対立軸にある両者の関係性の描き方にあると思う。
本作では「同性愛」の要素が随所に顔を覗かしていて、その秘めた思いが予想外の方向へドラマを転がしいく。
そして地獄のような状況の中で、“蜘蛛の糸”のように垂れてくる救いのようなもの。
それを端的に表す台詞が「メリークリスマス、ミスターローレンス!」ではないかと思う。
その台詞を発したどアップの笑顔もまた、エンドロールの音楽と共に心に残ります。