ペルシャ猫

戦場のメリークリスマス 4K 修復版のペルシャ猫のネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

意外だった。まさか愛の物語だったとは。

観終わって最初に出た感想は”分からん。”だった。正確に言うと、私の認識が映画の意図していたものと合致しているのか自信がなかった。いい意味で不親切な映画だった。少々物事の進み方が突発的に感じたり、それぞれの登場人物の感情が複雑で理解が難しかったりしたけど、それは言葉(説明)が少なかっただけで一貫性があるものだった。よって、全然不快じゃない。

まぁ、けど、私はこう解釈した。
坂本龍一の、デヴィットボウイへの愛の物語。ボウイの、坂本と自身への赦しの物語。これと並行してトム•コンティと武の異文化交流ってとこでしょうか。

序盤のシーンで坂本がボウイを初めて目の当たりにした時の目遣いが、一目惚れのそれだった。けど坂本はそれを自覚してなくて、その後は変に執着して探りを入れたり、ピンチの時は擁護したり、何かとボウイを気にかけていた。
(結局ここまでの考察は鑑賞しながら導き出せたのものの、なんだかその認識で合ってるのか確信が持てなくて最後まで私はモヤモヤとしてしまった。)

一番決定的なシーンである、ボウイが坂本の両頬にキスをするシーンでは、これまで坂本が外国人の兵士へ行ってきた仕打ちに対する”赦し”のキスとして坂本が解釈して、その懐の広さに感服してボウイを斬り殺せなかったのか、それとも坂本の持つ恋心?みたいなのが大きく揺さぶられて殺せなかったのかが分からなかった。両方なのかもしれない。

ただ、私が感じたのは坂本→ボウイへの愛とボウイ→坂本への愛は別ものであるように思えた。前者はボウイに限定された狭義?の愛だけど、たぶん後者はもっと人類愛的な?、ある意味キリスト教的な愛だったんだと思う。

坂本が倒れ込むシーンは観終わった後も何度も思い出すし、思い出すたびに彼が感じたショックが段々と理解できるようになった気がする。一番好きなシーンだし、あれを観るためだけにまた映画館に足を運びたいとさえ思う。

トム•コンティはどんなに酷い目にあっても日本人を異なる民族•文化を持つ人々として理解することで変にパーソナルに怒りを感じずに接していた。彼が虐げられるような立場にいる中でそういった余裕を持てるのが凄いと思った。そして映画の中でやたらとヨーロッパ人は”権利”を主張する。個人的に政治思想を大学でちょいと研究している身としては面白く感じた。多分映画的には、ヨーロッパとアジアの決定的な価値観の違いを描写することで、日本人の頑固で視野が狭くて可哀想な側面を強調したかったのだろう。武はその点においてトム•コンティに歩み寄ろうとしていたのは救いだった。けど、やはり”日本=間違い”、”ヨーロッパ=正解”みたいな構図があまり好きじゃない。(このトピックに関してはもう少し詰めたいところだがまた今度。)

イギリス人はどこへ行ってもイギリス人。死の瀬戸際まで皮肉を言う姿は筋金入りだ。鞭打ちを喰らった体のボウイを日本人兵が連行しようとする時(もしかしたら違うシーンかも)に“歩き方ぐらい知ってる、ずっと練習してきたからね”(英文は確かこんな感じだった)って断った時は笑ってしまった。あと、法廷?で”君の名前はジャック•セリアズで間違いないかね?”って聞かれた時に”まぁ、自分ではそう認識してるけど?”って挑発的に答えた時も、此奴、やりおる.....と思った笑

今ではすっかり映画のサントラを聴きながら勉強をしている。印象に残るシーンにはいつも”種を蒔く”が流れてて、劇中でこの曲が流れるたびに強く私の中の何かが揺さぶられるのを感じた。
サントラを聴いてる時に”my love wears forbidden colors”って歌詞が流れてきて、え?これは誰が誰に向けたものなんだ?!って気になり、”forbidden colors ”という曲について調べたら様々な歌詞の解釈があるみたいで、映画をより深く考察できて楽しいのでオススメです笑

だらだらと何の脈略もなく感想を垂れ流した感じではあるが、総じてこの映画が好きであることをお伝えしたい。