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戦場のメリークリスマス 4K 修復版のKKMXのレビュー・感想・評価

4.5
 本作は詩的で美しく、心の深いところに届くような作品でした。これこそ名画だと思います。


 テーマは濃厚で深いです。東西の価値観のぶつかり合い、極限的な環境での人間同士の衝突と深いつながり、『我々はみな間違っている』と反復される言葉、贖罪と意味ある生き方、それによる自他の解放等々、いくらでも考察できるタイプの作品だと思いました。

 しかし、自分にとっては珍しく、本作においては言葉にして解釈するよりも、場面場面をただそのまま心に留めたいと感じました。
 花を喰らうセリアス、軍属カネモトの切腹とともに舌を噛んだオランダ兵、『ファーデル・クリスマス』と言ってローレンスとセリアスを解放するハラ、ヨノイの自分を生きられない深い悲しみをたたえた表情、相反するように迷いのないセリアス、セリアスのヨノイへの抱擁とキス、セリアスの顔に留まる蝶、セリアスと弟とのイメージの中の邂逅と赦し、有名すぎるラストの『メリークリスマス、ミスターローレンス』というハラのセリフと悲しくも爽やかな表情、そして何より全編を通じて流れる坂本龍一のテーマソング。


 キャストの大胆さも本作を名画たらしめているのだと思います。イギリス兵セリアスを演じるデビッド・ボウイ、ハラ軍曹を演じるビートたけし、ヨノイ大尉を演じる坂本龍一の存在感がものすごくて引き込まれる。
 ヨノイに坂本龍一を抜擢したのはすごい慧眼です。坂本龍一はたけしやボウイに比べると驚くほどセリフが棒読みで滑舌も悪い。その分、表情と佇まいで見せていたと感じました。もし、ヨノイがちゃんとした俳優だったら、名画に至らずに普通の映画で終わっていたかも。あのたどたどしいセリフ回しがヨノイの存在のぎこちなさを表現し、より悲しみが伝わったと感じました。
 それはボウイ、たけしにも言えることで、この3人だったからこそ、こんなにも詩的な作品になったのだと感じています。完全にキャスティングマジックが起きてました。


 そして、やっぱりこの男について言及せざるを得ないですね、キター!内田裕也!
 本作では序盤にチョロっと登場する収容所の所長役。相変わらずのシケた昆虫面をぶら下げて、いつものロケンロール訛りで偉そうなことをしゃべっておりました。裕也は目が死んでいるから、国家権力の犬みたいな役はピッタリだ!ロケンローラーのクセに。
 とはいえ、ちゃんとロケンロールな見せ場もありました。セリアスの銃殺刑をあえて空砲で行い、助命するのです。やはり裕也的には「デビッドを殺すことはできないね、シェケナ!😎」ってとこなんじゃないですかね。昏睡レイプや郵便局強盗をしても、同朋は殺せないというところか…いや、モスキートではアン・ルイスを強姦してたから関係ないか!
 裕也の出番は序盤だけなのが残念!もっと見たかったけど、本作の美しさを考慮すると、シェケナの登場時間はこれくらいがバランスいいかも!あと、ジョニー大倉は品川庄司の人に似ていた。

大島渚はロケンロール!
シェケナ!シェケナ!シェケナ!😎
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