Ren

戦場のメリークリスマス 4K 修復版のRenのレビュー・感想・評価

3.0
名作を映画館で初観賞。開始10秒で「あんたがロレンスかい!」と突っ込みを入れつつ(デヴィッド・ボウイかと思ってた)、その後はとにかく集中しっぱなしの123分だった。

強烈な存在感から放たれるオーラによる説得力で圧倒するメイン3人と土台を支えるトム・コンティが凄く良かった。この手の映画でメインキャストに非俳優を抜擢する思い切りの良さと、それが話題性だけに留まっていない唯一無二の雰囲気を出すのに成功していたことが素晴らしい。

戦争映画とは思えないほど閉鎖的な空間で進行する物語が、より日本軍が俘虜に対して惨い扱いをしていた闇の部分の描写を助長しており心が辛い。俘虜は恥だから自決しろと言う日本軍と、恥ではないし生き延びたいと言う俘虜。異国間の思想の違いが浮き彫りになっていくものの、それが火種になって破滅へ向かうことはない。
終始「どこの国の映画でもない感じ」がしてならなかったのは、多国籍なキャスティングに加えて映画全体を包むこの温度感のせい。

俘虜収容所かつ女性の居ないコミュニティというある種 非現実的で異常な環境下で形作られた愛は、表現が適切か分からないけど何処までも美しかった。
2時間が全部フリに感じるほど鮮烈なラストカットの台詞に込められたのは、生き抜いた者同士の絆なのか、純然たる同性愛的愛情なのか、それを考えられるだけで、この映画を観た時間は無駄ではなかったと思える味わい深さがある。

不満点をあえて挙げるなら、中盤のセリアズの回想シーンをもう少し上手く演出してほしかったということ。集中力が切れかかってきたタイミングで単調気味なパートが長く挿入されるのでかなり疲れてしまった。
主題歌の乱発も気になった。もっとキメのここぞというタイミングに絞って使ってくれたほうが個人的には好きかもしれない。なんとなく名曲の有り難みが薄まってしまった気はする。
大好きなのは、ハラが酔って俘虜2人を釈放するシーン。映画全体に張り詰めていた緊張がふと緩むような優しさと温かさが堪らない。

当然ながら、外国人が話す日本語には字幕がつかないので台詞を聞き取るのは大変。何なら日本人の日本語も非常に聞き取りづらく、そういう意味でも観賞後はどっと疲弊した。
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