カラン

戦場のメリークリスマス 4K 修復版のカランのレビュー・感想・評価

4.5
戦時下の友愛を描いた金字塔といえば、ルノワールの『大いなる幻影』(1937)だろう。当時のフランスとドイツに友愛などあり得ないだろうし、将校同士の愛などましてやあり得なかった。

「なぜあなたは私に優しいのですか?」とフランス将校はドイツ将校にたずねる。


そういう不可能な関係性に捧げられた映画が、大島渚の本作『戦場のメリークリスマス』である。語りえない愛にあてがわれた表現は「メリークリスマス」である。

「なぜヨノイ太尉はあいつに関心があるんだ?」とハラ軍曹はローレンスにたずねる。


ルノワールは牢獄の閉塞と丘の上の山小屋の広がりを対比して、ホモズの行き止まりとヘテロセクシャルの未来を重ねてみせながら第一歩を印づけたが、大島渚には山の上の見晴らしは与えられない。だから北野武の顔が効く。ルノワールの山が担った意味作用は、この映画においては北野武が果たすことになる。2度チャンスが与えられ、2度奇跡をなすというのは、映画史に語り継ぐに値する。セリフじゃない。もちろん風景ではない。表情というアクションで不可能な関係性を余裕で超えていく。


Blu-rayで視聴。たしかにリマスターされたものは素晴らしい。リマスター版を見直す価値は十分にあるだろうし、はじめての人にはもちろんこちらを勧める。
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