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愛のコリーダ 修復版のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

愛のコリーダ 修復版(1976年製作の映画)
4.2
定吉二人キリ

昭和の猟奇殺人事件として有名な『阿部定事件』

料理屋吉田屋の主人・石田吉三と不倫関係にあった女中の阿部定、2人が都内の旅館に滞在しつつ愛慾の限りをつくした日々とその結末。

全編エロス!!!!!!

大島渚監督特集スクリーン上映で『戦メリ』と『愛コリ』両方は日程的に無理だった……そして選んだのは『愛コリ』のほう。
良かった……悔いはない(歓喜の涙)

阿部定は早熟な女性で、芸者・女郎・妾などを転々としてきたためか求められれば受け入れる、欲しければ誘い。
片や石田吉蔵は芸者遊びも座敷遊びも手慣れた男で、モテる、マメである、拒否しないという男。
基本、色恋に慣れてた2人が何故にこうも溺れたのかというと……相性良かったからなんでしょうねぇ……きっと……。

松田英子さんの阿部定と藤竜也さんの石田吉蔵が、とにかく息を呑む絡み合い。
求めても求め足りない定、求められるままそれに応え続ける吉蔵、睦み合いが段々と慾るような溺れるような悦楽の追求へ向かい出す。

松田英子さんの表情が後半に向かっていくに従って凄みを増していくんですよ、また体の奥に埋火をずっと持っているような欲情が、鬼気迫る。
藤竜也さんの、飄々として女の扱いに慣れた所作、定の独占欲を重いとか束縛とかすら感じない、宥めるように受け止めるところ、それにどこかしら生きることに執着が無さそうな風情。

最近たまたま読んだ本に『ロマン的生の絶対的肯定』という言葉が出てきて、例として心中をあげているのだけど、このふたりも心中とは別のベクトルだけど互いの愛欲を絶対的に肯定していたからあんなに耽溺できたのかな……と、ぼんやり考えたり。

ニーチェに『苦しみは言う、「終わってくれ」と。しかし全ての悦びは永遠を欲する。深い深い永遠を欲する』

定吉ふたりきり。

あの濃密な空間でふたりきりで永遠にいたい……とは望んでも、一歩部屋を出れば現実が。
それから目を逸らすにはあの結末が究極の結果でもあるよなあと。

映像とか配置や構図、着物の色から、更には食器、部屋の設えまで、監督の拘りがみえるようでした。

いやー…………良かった…………。