シエル

愛のコリーダ 修復版のシエルのレビュー・感想・評価

愛のコリーダ 修復版(1976年製作の映画)
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日本初のハードコアポルノ。

ポルノは多かれ少なかれ女性の女性性あるいは人間性を蹂躙するものという認識から、鑑賞する気が起こらなかったが、嫌になったら途中でやめればいいと思って観る事にした。

ポルノとは、性的な描写によって観る者の情欲を掻き立てるもの、あるいは欲情させるもの、と認識している。その意味でいうなら本作はポルノではない。

性によってしか生を実感できない(男)女の話。
結局は性によってさえ生を本当には実感できず、死(殺)にいたる。もちろんそこにも満足はない(死んだ吉が満足したかどうかは確認しようがない)。

性は本来、人間の命を繋いでいくものだ。しかし定は性によって人間をモノに還元してしまった。『危険な情事』(1987)が描いたヤバい女よりも、貞が遥かにヤバいのは、吉の生殖器を切り取るという猟奇的な行動に出たからではなく、吉をモノに還元してしまったという点においてである。
本作の恐ろしさは、人間も所詮物体であるということを一つの実話を通して見せたことだ。不倫ホラーのもうひとつの形という事になるかも知れない。

鑑賞後、すぐにシャワーを浴びたくなった。“死んだネズミのような匂い“が自分に移ってきてはいまいかと思ったからだ。

(過去の鑑賞メモ)
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