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ボストン市庁舎のkyokoのレビュー・感想・評価

ボストン市庁舎(2020年製作の映画)
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トランプ政権が誕生する直前だった『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』、トランプ政権の弊害なぞどこ吹く風の『インディアナ州モンロヴィア』、そしてトランプ政権下で行政の側から民主主義を死守しようとしている『ボストン市庁舎』。

ワイズマン作品には珍しく、メインキャストなる存在がいる。それが、「困ったことがあったら私に電話して!道で会ったら声をかけて!」と呼びかけるマーティン・ウォルシュ市長(喋りだしたら止まらないタイプ)。アイルランド移民のルーツを持つカトリックであり、二度の小児がんを克服し、「強制バス通学」の物々しさをリアルタイムで目撃し、壮年期はアルコール依存症に陥ったというから、彼の「マイノリティや社会的弱者、誰ひとりとして取り残さない」政治信条には合点がいく。

市民の幸せのための膨大な行政サービスに「お役所仕事」なし。彼らはとにかく市民の話に耳を傾け、対話をする。
その仕事ぶりには頭が下がる。

反面、人種差別によって格差が生じていることは、建築が進むビルやきれいな住宅地域と貧困地域とのコントラストからも明らかだった。移民が多い地域であればあるほど、差別問題は根深い。
アメリカの分断は地方が止めてみせる!というのは市長時代には挑戦に過ぎなかったかもしれないけど、バイデン政権の労働長官に就任した今、その挑戦が実を結ぶか。

それにしても昔のワイズマン作品によく出てきた「笑えるヤバめの人」が減ってきたなあと思う。実際いないのかヤバさが規制を越えてしまったのか分からないけど。
今回は新規大麻ショップの中国系オーナーがちょっと面白かった(なにその熱弁!)。
駐車違反もその弁明が通るのか、だったな(通らない人も)。
あと、エコの概念が吹っ飛ぶ、ワイルドごみ収集。
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