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ボストン市庁舎のmoeriのレビュー・感想・評価

ボストン市庁舎(2020年製作の映画)
4.4
冒頭、ボストン市の問合せ窓口の様子から始まり、部署横断的な市政を見せていくんだなと思ったけれど、そんなものでは収まらなかった。
次のカットでは、なんと市長が市と警察の事件後のケア引き継ぎについて、一人の担当者の名前を上げ、より良く連携するための問題提起と提案をしている。
ウォルシュ市長のことを存じ上げなかったので、やけに熱く語る人だな、と最初は思っていた。

市民の暮らしが市政に繋がり、市民のために市が存在し、市民との対話を重ねて問題解決をしようとする姿勢に胸打たれた。
対話の場に出向く市民は一握りかもしれないけれど、その場にいる多種多様な人たちが、自分の住む街に、仕事に愛着と誇りを持ち、平等であるべきだと真摯に意見を伝える姿は、日本とは大きく違う。
ウォルシュ市長が繰り返す、素晴らしい仕事をしてくれて、関わりを持ってくれてありがとうという趣旨の言葉たち。
リーダーが何を目指し、理想とする社会のイメージを、役職や立場関係なく誰にでも伝わるように、自らの言葉で伝えてきたことで、市政に関わる誰もが市民のための仕事をしているという誇りに溢れている。その姿は美しい。

コロナ禍の日本でも覆い隠されていた分断がうっすらと見えているが、相変わらずの自助・共助あっての公助と弱者に厳しい社会だ。この先、労働人口減少のシナリオはその通りに進むとして、果たして現在の行政のあり方のままで、違いによる分断は起きないだろうか。
公共とは何かを問い続ける監督の作品を観れて、心から良かったと思う。
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