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ボストン市庁舎のMypageのレビュー・感想・評価

ボストン市庁舎(2020年製作の映画)
4.0
初ワイズマン。

仕事の映画だった。

建物の外観の短いショットがあって、すぐに議論の最中に入り込む。同じリズムで4時間続いていく。市の予算の説明が最初の方にある。メモもなしに、冗談も交えながら正確な数字も引用して、上手にプレゼンテーションする職員。聴いている市民の人たちも、微動だにせず話の内容を追いかけているようで、真剣な表情。
ここから始まるのがいい。いわゆる「政治のドキュメンタリー」というと、「問題」というものを入り口としてその内部に入り込んでいく語り口があるけど、予算をまず最初に具体的に理解させることで、仕事の映画になっている。
市長ウォルシュの「人物」に迫るドキュメンタリーでもないので、裏・表みたいな見え方もしない。相談の窓口を確保して、各部署で連携するために状況をよく知っている人物を連絡網の中心に置くとか、極めて具体的な指示。そのほかのシーンも全部そう。
小川淳也さんの「青空対話集会」のようなことが、実際に効力のある政治の場で行われている。『香川1区』で、スーパーの前での演説でマイクを持って意見を述べた女性のような人たちが、この映画で市民として映っている人々の対話の最低レベルになっている。日本の政治レベルの低さがわかる。

電話対応のシーンで始まって、電話対応のシーンで終わる。

格差、差別、貧困、ジェンダー、環境、高齢化等々の問題が、実践的なレベルまですでに細分化された状態で、当たり前のように取り組まれ始めている。そのことを実感する映画だし、仕事をしようと思える映画だ。「ブルシットジョブ」みたいな言葉が耳元で小蝿のように飛び回っていたのを追い払ってくれた。

政治のドキュメンタリーというと、「対話のできなさ」に焦点が当たるものをこれまで見てきた気がするが、ここに映っているのは、かなり対話のできる人たちだった。言い淀み、諦め、誤魔化し、論点のすり替え、激昂、疲弊、といったお決まりのシーンはない。これがアメリカの中でも相対的に「できる」人たちだということはきっとそうなんだろうけど。だけどそれでも、ちょっと希望。