TaichiShiraishi

ボストン市庁舎のTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

ボストン市庁舎(2020年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

274分間、非常に興味深い唯一無二の映画体験をさせてもらった。上映時間があっという間だったとも、274分が常に面白いとも、すべてが理解できたともいえないが、本作を「体感」できたことは非常に有意義な時間の使い方だったと思う。

一口にはとても語り切れない作品だったが、通底して「民主主義制度のめんどくささと尊さ」を描いていたと思う。マーティ・ウォルシュ氏はとても素晴らしいリーダーだが彼にすべてを任せていればいいかというとそうではない。ボストン市の職員一人一人、経営者、市民たちがそれぞれ自分で考え、自分と自分の周りの幸せのために何ができるのか、何が必要なのかを常に考え、実現するにもみんなが納得できる案を考えなければならないし、語って発信していかなければならない。

劇中見る限りでもボストンは数々の改革によって日本からしてみればうらやましい限りの先進的都市になってはいるが、けっしてそこに胡坐をかいてはいないし、まだ過渡期で数々の問題も残されている。そして、少なくとも映画を見る限りでは、誰もそれくらいの問題は残ってもしょうがないと切り捨てようとせず、解決に向けて前を向いている。274分という長さはそういった一人一人に求められる真摯さ、それが不可能ではないことを証明するために必要だったと思う。

場面も議題もたびたび変わるし、そのすべてを理解したり集中して聞けたかというとそうではないのだが、この社会を維持するためにはそういう興味を持ちづらい話題でも自分事としてとらえ、少しでもできることを考えないといけないのだと突き付けられた気がした。そういう理解できないことをめんどくさがって蓋をするからトランプ政権で多く見られた分断が起きてしまうのだ。そして分断は社会を弱体化させる。

理想論だけでなく厳しい現実も突き付けてくるが、無理だと思っていたことが実現できている場面も多々あるし、希望をもらえる作品だった。地球上で生きる誰もが無関係じゃない、究極の人間賛歌映画だ。