ボストン市庁舎の作品情報・感想・評価 - 27ページ目

「ボストン市庁舎」に投稿された感想・評価

泉くん

泉くんの感想・評価

4.5
最近のフレデリック・ワイズマンの会議にお邪魔しますスタイルがあまり好きじゃ無いんだけど、今回は取材対象が多種多様で面白かった。劇場では無く映画祭の配信で、家でダラっと見れたのも良かった。
alsace

alsaceの感想・評価

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個人的に今年注目の1本です。

ワイズマンのドキュメンタリーは、NY公共図書館 エクス・リブリスを、見た時も思ったけど今時考えたい“公共”について、とても良い題材だと思う。

今回も音楽・ナレーション一切なし。上映時間もさらに倍の272分!

「説明する事の重要性」と「聞く事・調べる事の必要性」が対になってるなと冒頭の対話のシーンを見ながら感じました。

ボストンの街の現状を絶賛する気には全くならないけど、第三者の前にこんなにカメラが入って、色々撮影出来てる部分は、羨ましいと思った。

日本だと行政に対する不信感が高くて、普通の市民がタウンミーティングレベルで丁々発止のやりとりするレベルまで熱くなれるか疑問だなとも感じたんだけど、「信じる・信じない」の問題というよりも、まずは、聞いてみる・考えてみる・調べてみる。そして、現実を見よ。という事なら、日本に住むウチらでも出来るかなと。

それと要所要所に挿入されてくる市長のスピーチが、どれも的確で中々良い。日本の首長には、あまり感じられない特徴で、印象に残りました。

映像に身を委ねる娯楽作と対照的。
この人の作品は、毎回考えながら見る映画。有名俳優が出てなくても魅力的な作品ってあるよね。と改めて認識させてくれる監督でした。

@ 山形国際ドキュメンタリー映画祭オンラインにて鑑賞
pherim

pherimの感想・評価

4.4
御年90歳を越えたフレデリック・ワイズマン、
その集大成にして野心作。272分をもたせる技量が半端ない。

市長マーティン・ウォルシュによる市民との旺盛極まる対話努力を軸に、市行政の多面的発光が齎す陰翳を余す処なく汲みとる不可能を成し遂げた、ほとんど奇跡にも近い巨篇。
IDFA2020にて。フレデリック・ワイズマンの最新作『city hall』(市役所)、275分の大作を堪能。故郷ボストンの市政運営、市民の対話の観察を通じ、都市の多様性を考察する。マーティ・ウォルシュ市長が所々登場し市民の声を聞くと共に、明確にトランプ政権の思想を批判する。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

4.0
【ワイズマンが贈る崩壊する民主主義への処方箋】
CPH:DOXの目玉としてフレデリック・ワイズマンの『City Hall』が配信されている。ドキュメンタリー映画の巨匠である彼が生まれ故郷ボストンに舞い戻り、マーティ・ウォルシュ市長の活動を中心に市民と政治の関係性を紡いでいく内容である。これは単に老年に差し掛かったワイズマンの回顧色強い対象ではない。前作『インディアナ州モンロヴィア』でドナルド・トランプ支持者多い地域を撮ったワイズマンが、今度は反トランプ派の地域を撮ったに過ぎず、まさしく蝶番の関係となっている。本作を観ると、何故カイエ・デュ・シネマが2020年のベストワンに本作を選んだのかがよく分かりました。というわけで感想を書いていきます。

ブルータリスト建築の無骨なボストン市庁舎に始まり、ボストンの街のどこかドライな建築を巧みに挿入しながら、都市から政治、市民へと微分を重ねていくことで人の営みの重要な要素を抽出していく。マーティ・ウォルシュ市長は、限られた予算の中でボストンの中にある様々な問題を解決しようとしている。癌やアルコール中毒といった厳しい境遇を乗り越えてきた彼は対話を重視しており、労働者やマイノリティ、韓国系、プエルトリコ系といった人種のコミュニティとの議論の場を設けて傾聴する。看護師のストライキ会場にも足を運ぶ。障がい者支援団体に訪問した際には、自らエプロンを身につけ、給仕を行ったりしている。さらには大麻薬局のオーナーにすら議論の場が設けられていたりするのだ。

ドライで粛々と業務をこなす彼、対話を重要視する為、鈍重に政治は動いていくのだが、一つ一つの問題とじっくり向き合って街のレベルを向上させていこうとする愚直さこそ民主主義の真の姿だとワイズマンは囁いているようにみえます。それは間接的にドナルド・トランプ的政治、もとい2010年代以降世界同時多発的に崩壊していく民主主義に対する批判となっている。

『インディアナ州モンロヴィア』ではトランプ派多数の地域を扱っているにもかかわらず、観客の予想を裏切り、ユートピアのような平和が紡がれていった。これにより外の世界に対する無関心さの脅威を暗示させていた。『City Hall』では本来の民主主義のあり方を4時間半に渡って提示し続けることで、今の世界が誤った方向に突き進んでいることを告発している。またフレデリック・ワイズマンももう90歳を超え、残された時間が少ないことを悟っているのか、彼が一番重要視しているであろう議論や演説のシーンが大半を占めているのも特徴的であろう。

だが、流石はドキュメンタリーの王だけあって4時間半飽きさせないギミックが多数さりげなく仕組まれている。このドキュメンタリーにはアクションがあるのだ。長い議論や演説の合間には市民の活動が挿入される。そこでは、ゴミ収集車がベッドや台車といった、日本では粗大ゴミになりそうなものをバキバキと貪り食う場面がある。このゴミ収集車が壊れるか壊れないかのサスペンスが面白い。

また、ボストンの歴史的資料が眠る場所に着目すると、外の祭の音に合わせてまくし立てるように絵画をスライドさせていく。こうした変調を定期的に加えることで、観客は世界に没入することができるのだ。また、デヴィッド・クローネンバーグ『クラッシュ』のように無機質に複雑な街をドライに撮ることで、行政が市民の問題を解決するのは一筋縄ではいかないことに説得力を持たせているといえる。

一方で、議論/演説に対する執着が強い為、4時間半必要であったかと聞かれると疑問を抱いたりする。『ニューヨーク、ジャクソン・ハイツへようこそ』、『エクス・リブリス ニューヨーク公共図書館』そして『インディアナ州モンロヴィア』の手数に比べると少ない気がする。流石に、無骨な建築→市長との議論→市民生活をグルグル回転させるだけで4時間半持たせようとするのは無理がある気がした。

しかし、これはボストンやアメリカだけの映画ではない普遍性はあるし、今に必要な処方箋であるのは確かだ。日本ではワイドショーを見れば、政治家やコメンテーターが怒鳴りあって相手を潰すことしか考えてないし、政府は開き直って市民を無視している。恐らく、フランスの映画誌カイエ・デュ・シネマの年間ベストにおいて1位を取った理由も、シャルリー・エブド襲撃事件や黄色いベスト運動でどんどんと分断が発生して暴力でしか解決できなくなったことに対する処方箋として推しているところがあるのではないだろうか。

日本での配給はついているようなので、早く公開されることを祈ると共に個人的には『インディアナ州モンロヴィア』の公開も併せてお願いしたいと思う。
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