ボストン市庁舎の作品情報・感想・評価 - 4ページ目

「ボストン市庁舎」に投稿された感想・評価

拝一刀

拝一刀の感想・評価

4.2
光と闇を抱える超大国アメリカ。その「光」の側面を久しぶりに見ることができました。

政治とは「人々のため」にあるものであり、とりわけ「困っている人々のため」にあるという理念を実践する政治家と、自分たちの生活に関わることを他人任せにせず、交渉相手とエネルギッシュかつ論理的に語り合う一般庶民の姿を見て、ただただため息をつくばかりでした。

ラスト15分で男女の警察官がペアでアメリカ国歌を歌うシーンがありますが、生まれて初めて他国の国歌を聞いて鳥肌が立ちました。
ウォルシュさんがバイデン政権の閣僚となり、彼の後を黒人の女性市会議員が継ぎ、そして今回台湾系女性が新たに市長就任。その経緯を知って見るこの映画は、撮影時にワイズマンが想ったそれとはいかばかりの違いがあったのだろう、あるいは違いなんて無いのかしら?

映画の中でも取り上げられていたオバマケアに代表される、福祉や共生を悉く排除し(実は排除される側の最右翼が自分たちだと、多分未だに微塵も信じていない支持者たちの投票によって選ばれた)トランプへの「否」が溢れ出る5時間(ちょっと誇張、でも休憩含むと概ねそれくらい)。

実は見る前はかつての『SHOAH』のように何かしら悪意の「やらせ」が含まれるのでは? と期待半分不安半分ではあった。
でも、同時代ということが大きく影響してるように思うんだけど、今回はひたすら真っ当な、生真面目に観察に拘りまくった、とても真面目な映画。(もちろんこれまでも真面目さは一貫してるけど、その表出のさせ方がやたら律儀ということ)

ところで…
ウォルシュさんに限らず、登場する皆さんがしゃべるしゃべる。文章じゃなく発話っていうこともあって繰り返しのしつこさも尋常じゃない。それを律儀に追い続けるカメラの執念に、途中から気持ちを改めてじっくり付き合いましたけど。

彼の国の会議は日本のそれと比べて極端に短いんだ。会議の長いのはアホ! みたいに言われるのが常だけど、あの調子でしゃべりまくれば会議は永遠に終わらないだろうな。

というか、彼らは議論や協議をしてるわけではなくて「スピーチ」「演説」してるわけですけど。まあ、日本の国会の代表質問と同じ体で、日本のそれと比べて、遥かに内容豊富、ということなんだけど。

ただ、情報量が多過ぎて私の惨めな英語力では理解できない流れもままあって、その辺りは一回の見物じゃ無理なのかも。(ふう〜っ)

今のところ、今年のマイベストテン、外国映画は間違いなくこの『ボストン市庁舎』ということになります。
 タイトルの通り、舞台はボストン。ボストンと言えば、川を隔てた対岸のケンブリッジにはハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(M.I.T.)がある。マサチューセッツ州の州都であり、ボストン茶会事件という歴史的な出来事でも有名だ。アメリカで最も重要な都市のひとつである。
 実は映画を観て少し驚いた。職員がこれほど真面目に話し合い、そして職務に努力している自治体が、トランプを大統領に選ぶアメリカにあるとは思ってもいなかったのだ。考えてみれば、アベシンゾーが長いこと総理大臣だった日本にも、まともな自治体はある。大変失礼した。

 市長が誇らしげに演説するように、ボストンは失業率やその他の数字でアメリカの都市をリードしている。アメリカで最も優れた市政が行なわれていると言っていい。それを支えているのが、会議で繰り広げられる職員同士の熱い議論である。
 なにせ、ひとりひとりの発言が長い。同じ長い話でも、井戸端会議の長い話とは違って、ちゃんとしたデータと自分の経験を踏まえての長い話である。こういうまとまった論理の展開が出来るのは、日頃からの問題意識と、その解決のための努力があってこそだ。

 こういった会議が日常的に行なわれ、ときには市長も参加する。部署ごとの責任者に権限が移譲され、責任者が一同に介して市政を取りまとめる会議も行なう。そこでは市長から直接考え方が伝えられ、それに対しての議論もある。市長に賛成する意見もあれば、反対する意見もある。市政は上意下達ではなくボトムアップでもない。市長も職員たちも、市民の安全を守り市民の希望を実現するための対等なパートナーなのだ。だからフランクな議論ができる。
 警察署長は単に法を執行するだけではなく、被害者のケアや出所した犯罪者の更生にも協力する。しかしどこまでもそれをやっていくと犯罪者の取締りが疎かになるから、どこかで次の部署にバトンを渡す必要がある。ボストン市庁舎には、既にその部署が用意されている。用意周到なことには、更にその次の部署まで用意されているのだ。
 同じようなことが他の事案でも実施される。部署から部署へ引き継がれるのだ。市長は部署同士が少しずつオーバーラップしてスムーズに問題が解決されるように、部署の責任者を集めて議論を重ねていく。目指すのは民主主義の完全な実現だ。素晴らしい。実に素晴らしい。

 市長は銃規制の法案が通らないことに憤る。学校での銃乱射事件が起こるのは世界でもアメリカだけだ。銃があるから乱射事件が起こる。銃を規制すればいいのは誰にでも分かることだが、全米ライフル協会が長期に亘って政権に圧力をかけ続け、共和党の政治家を中心に、銃規制法案が通らないようにしている。
 市長は、不祥事を起こしたメーカーがリコールしたり改善策を示したりするのと同じように、全米ライフル協会は学校の銃乱射事件が起こらないように改善策を出す義務があると主張する。まさにその通りだ。この市長は当方が言いたかったことを百倍も上手く表現してくれる。見事である。そして勇気がある。

 ボストンの職員が心置きなく働けるのは、市長の勇気に支えられているところが大きい。議論でも「市長が言っている」という言葉がたくさん出る。それだけ現市長に対する信頼が厚いということだ。こういう首長さんは日本にもいる。コロナ禍に対して画期的な対策を講じた世田谷区長の保坂展人さんや和歌山県知事の仁坂さん、東大出の元国会議員とは思えないほど熱い男、明石市の泉市長などだ。これらの首長さんたちは信頼されているだけではなく、尊敬されてもいると思う。総理大臣も首長のひとりだが、岸田文雄を尊敬している日本国民は何%いるだろうか。小池百合子を尊敬している東京都民は何%いるだろうか。

 国が地方自治体にあれこれ規制をかけて、首長に手腕を発揮させないでいる面もあるが、それで諦めるのではなく、規制や条件の中で出来ることを工夫して実現するのが優れた首長だ。そういう首長の一番の仕事は、職員が働きやすい環境を整備することである。頑張りたい職員、努力したい職員は沢山いる。上から押さえつけて努力させないのが最悪の上司で、押さえつけを取り払って天井をなくせば、優れた職員はどこまでもハシゴを昇っていく。
 首長によって都道府県や市区町村の住みやすさ、幸福度が変わるとすれば、有権者の使命は優れた首長を選ぶことだ。しかし日本では、ドブ板選挙と言われるような縁故政治がいまだに主流である。縁故資本主義と呼ばれるように、日本の社会自体が縁故主義なのだ。有権者は縁故に左右されてしまい、自分の判断を放棄している。これでは国民主権とは言えない。日本の有権者の多くは民主主義を放棄しているに等しい。無念だ。
啓林堂

啓林堂の感想・評価

3.8
映像として見るより、文字とか本として読む方が楽しめた気がする。

ドキュメンタリーだからだろうけど、単調で4時間見るのはキツかった。

それでも、自分の今までの市役所像を変えるような、こんな積極的な市役所が世界にはあるのかと思った
KENTA

KENTAの感想・評価

4.1
よく頑張った〜長かった〜!

ボストン市長も、職員も、市民も
ちゃんと意見して、
主張するの凄いよ、ほんとに。
市民が声をあげる機会や場所が当たり前のようにあって、市長は市民のために仕事をすると繰り返す。違反切符きられた人々の弁明回、めっちゃよかった。さまざまな血の通った対話があってそれらをみていくとゴミの回収や舗装、伐採のような見慣れたはずの光景がまた違ったものにみえてきて不思議。私も生きにくさを抱えた若者だけど金が無くて頼れる人がいないのは自己責任ではないし、交渉の仕方を学ぶべきだという、日本にいてはなかなか聞こえてこない話が多く有難い。必見。
GOFEET

GOFEETの感想・評価

4.0
▶久々のテアトル梅田。コロナ禍を耐え、しかも2週間限定とはいえよくぞこんな作品を上映してくれたものです。ホンマ、感謝!感謝!
▶インターミッションを含んで約5時間の長尺物。
▶2018年秋から2019年冬にかけてのボストン市政府の活動が描かれています。
▶いやぁ〜もう、マーティン・ウォルシュ市長と比べるべくもないけれども、わが市の市長の情けないことと言ったら……
▶監督はドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン。

以下、フライヤーからの抜粋。

◆アカデミー名誉賞に輝く巨匠フレデリック・ワイズマンの「集大成」

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』で知られるドキュメンタリー界の“生ける伝説”フレデリック・ワイズマンが選んだ新作の舞台は、ワイズマン生誕の地でもあるマサチューセッツ州のボストン市庁舎。カメラは飄々と市庁舎の中へ入り込み、市役所の人々とともに街のあちこちへ動き出す。そこに映し出されるのは、警察、消防、保健衛生、高齢者支援、出生、結婚、死亡記録など、数百種類ものサービスを提供する市役所の仕事の舞台裏。ワイズマンが軽やかに切り取るこれらの諸問題は、長年にわたり彼が多くの作品で取り上げてきた様々なテーマに通じ、まさにワイズマンの「集大成」ともいえる仕上がりだ。2020年「カイエ・デュ・シネマ」誌ベスト1に選出。

◆今コロナ禍で問われる 「市民のための市役所」とは?

多様な人種・文化が共存する大都市ボストンを率いるのは、アイルランド移民のルーツを持つ労働者階級出身のマーティン・ウォルシュ市長 (2021年3月23日よりアメリカ合衆国労働長官に就任)。2018〜19年当時のアメリカを覆う分断化の中、「ここではアメリカ合衆国の問題を解決できません。しかし、一つの都市が変われば、その衝撃が国を変えてゆくのです」と語る市長と市職員たちの挑戦を通して「市民のための市役所」の可能性が見えてくる。それはコロナ禍で激変する日本社会に暮らす私たちにもますます切実な問題だ。私たちが知る〈お役所仕事〉という言葉からは想像もできない、一つ一つが驚きとユーモアと問題提起に満ちまた場面の数々。ボストン市庁舎を通して「人々がともに幸せに暮らしていくために、なぜ行政が必要なのか」を紐解きながら、いつの間にかアメリカ民主主義の根幹が見えてくるドキュメンタリーが誕生した。
1号

1号の感想・評価

4.0
対話、市民参加、自分ごと、立場の弱い人への共感、他者へのリスペクト、対話、対話…。
記者会見すら嫌がり、ベンチすら寝転べなく設計し、自助だ自己責任だと言われる。
真逆のリーダー擁するボストン市民は、自分たちには変える力があると思っているし、行政は多様性の力を信じてる。

インプットが多かった。ちゃんと咀嚼したい。
ddamin

ddaminの感想・評価

5.0
日本人がこの映画を見たら、まるでモノリスに遭遇した類人猿のような感覚に襲われることだろう。日本に幼年期の終わりはやってくるのだろうか。
〇会議、集会(イベント)の連続。いつもより合間に挟むイメージショット(街の風景)が多いような。
〇最大の見せ場は、アジア系経営陣が舵を取る大麻ショップの住民説明会。時間的にもトリ扱いでした。
〇ごみ収集車の恐るべしパワー。

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