ゆめちん

オートクチュールのゆめちんのレビュー・感想・評価

オートクチュール(2021年製作の映画)
3.5
オートクチュール

"この手は美しいモノを生み出せるのよ"

ここのところ躍進著しい、リナ・クードリ目当てで鑑賞。今後の成長が楽しみな女優さんですが、期待通りの演技で大満足。

引退を間近に控えた、ディオールオートクチュール部門のベテランお針子エステル。彼女は窃盗を繰り返しながら、その日暮らしの生活を送る不良娘ジャドの才能を見いだし、自身の後継者として育てる決意をする。

普段は見ることのできないオートクチュールの世界を、お針子職人という裏方で働く人の視点からアプローチしているのが面白い。そこに人種、宗教、格差社会といった問題がうまく織り込まれ、意外と派手さはなくじわっと心温まる物語になっている。

宗教や年齢、社会的地位も違うエステルとジャド。そんな対照的な二人が衝突しながらも、少しずつ絆を深めていく過程は、割とベタだけど見応えあり。

独特なアトリエの雰囲気、細心の注意を払い扱われる高級生地、お針子たちの繊細な縫製技術など、それらが醸し出す空間が心地よく、ずっと観ていたいと思うほど。アトリエでの作業で、香水係という役割があるのには驚き。

ただ、もう少し説明が欲しいところはあるし、汗を気にするならば煙草はどうなんだろう?など、気になる点もあるが、普段は縁のない華やかな世界の舞台裏を少しでも覗けたのは貴重な経験だった。
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