肉浪費

茲山魚譜 チャサンオボの肉浪費のレビュー・感想・評価

茲山魚譜 チャサンオボ(2019年製作の映画)
3.7
「舟を編む」等に通ずる"「学」へのロマン"を西洋宗教・思想の排斥と「漁」で培った知識に見る韓国式おドロドロしくない師弟愛「モノクロ映画」
いや、やはり韓国映画、イチモツ級の闇深描写ありましたわ!(必要以上にデカくな〜い?)

最初に、「茲山魚譜」とは「お魚(類)辞典」(図鑑ではない)みたいな"海洋学書"のことです。
朝鮮王朝時代の学者、丁若銓(チョン・ヤクチョン)ら王朝に仕える三兄弟が「天主教」(カトリック・キリスト教)を信仰していたため王交代、迫害により、1人は斬首、他のニ兄弟(丁若鏞著『牧民心書』も揃って語られる兄弟)はそれぞれ流刑(都出禁・孤島監禁)でヤクチョンは「黒山島」にて漁師の俐発な青年に出会い…
という「茲山」は「黒山」に由来する表現の漢字となります。

韓国の名優ソル・ギョング(『オアシス』、『殺人者の記憶法』)『太陽は動かない』(未見)のピョン・ヨハンと日本に関わりのある俳優で、
なんとソル・ギョングさんはNetflix『夜叉 -容赦なき工作戦-』のほぼ主演となり、韓国映画でも珍しい『パラサイト(モノクロVer.)』以来の白黒映画で、個人的には意図せず主演連続映画視聴となりますw

序文に書いた通り、モノクロだからって韓国お得意のドロドロ闇深が主軸の映画ではなく、心温まる"師弟愛"の映画となっていますが、"韓国映画好きでも"オススメしづらい映画だとは思うんですよねぇ…
「韓流時代劇(大河)ドラマ」が大得意な方には遠慮なくおすすめできると思いますが、なんたって朝鮮王朝時代・後期(1801-1814)の事で、中国の儒教(儒学と朱子学)が根底を成した政権時代であるので、"専門用語"だらけなんですわ!w
その用語が気になって仕方のない人には辞書(wiki)つまりはスマホが手放せない映画鑑賞となりそうですw ある意味では自宅鑑賞が相応しい"文化の映画"となりますねw

といっても、"師弟愛"の映画だと前述してる通り、話の流れはシンプルではあるんです。
身分違いの学者と漁夫が心を通わせて、学者は生活の為の『漁』に関心を示し、学術的(データ)と捉え、漁夫の青年は興味のある「性理学」(儒学の"理と人間の本性")の『学』の知識をお互いに教授できるWin-Winの関係を築くといったもの。
その漁師の名前は、日本でも馴染み深い不倫と演技力…ではなくヒットメーカーである人気が問われる「昌大」("まさひろ"ちゃうチャンデ)という名で、面白いのは彼側はの初期値という半生を通してヤクチョンの西洋的思想に迎合しないで排他的である"政府の思想(儒学・朱子学)に染まっている"事なんです。
だから、『舟を編む』を持ち出してはいますが、二人で学書を生涯を通して作り上げる血と汗の物語"ではない"ところに"問題提起"として現代に通じ得る"「民主政」の意義"を感じさせるのです。

ヤクチョンの「君主制や身分などなくなればいい」という思想や現代の『カモンカモン』に通ずる"女性尊重"の意識改革。加えてチャンデの存在さえ"まがい物"でありそうな「史実寓話」となりますが、
ヤクチョンが天主教徒(キリスト教徒)であるから聖書の「モーセの激昂」を彷彿とする出来事を盛り込んでるのが実に興味深いストーリーテリングでしたね…

が、そこに政権・思想を揺るがすような"「ヒロイックストーリー」ではない"ことの口惜しさ、モヤりが現代の韓国、そして世界全体へと「変わっていかも?」と"拡大解釈"される問題提起が旧時代からの"呼びかけ"であると意識する必要があるのかも知れませんね…