鳴り響くサイレンは聞こえない。避難場所では何がアナウンスされているのかわからない。
困惑と恐怖と孤独はどれほどだったろう。
10年前のあの場所に、聴覚障害を持つ人たちが存在することを意識したことは、たぶん、ない。そのことにひそかに動揺した。
「おしゃべりな」信子さん(ニットが大阪のおばちゃんルック)を静かにニコニコと見守る旦那さんが素敵だったな。
手話を禁止され、まともな教育を受けられなかったえなおさんの独特な手話はまさにコミュニケーションの原始的スタイルといっていい。
彼らとのコミュニケーションを勝手にあきらめていたのは我々のほうだ。
東日本大震災から10年、手話言語法条例が全国的に施行されつつある。
今からでも遅くない。