次男

しあわせのパンの次男のレビュー・感想・評価

しあわせのパン(2011年製作の映画)
3.4
正直、初めはゲロ吐きそうなほど苦手だった。

絵に描いたようなオーガニックな暮らしに、無菌室かのような清潔なロケーション、白飛びまくりの画面、おしゃれすぎる服や小物やいろいろ、ザッツ「愉快な仲間たち」。オープニングはだせえし、幼女のモノローグナレとか嫌いだわあ。女性監督の、トリップしてんじゃねーかってくらいの願望かよっつってね。嘘くせえーっつって。
嫌悪感がどろどろと湧いて、開始早々、友人にその嫌悪を伝えるメッセージを送ってしまったほど。

それがまあ、なんというか、観終わってみれば、ドラえもんの「きれいなジャイアン」よろしく、ちょっときれいな僕になったような気すらして、ちょっと負けた気分。悪態ついた分だけ、汚れてるような気がした。

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かく言ったが、やはり好き嫌いで言えば、ぜんぜん好きじゃない。

やっぱり潔癖すぎるこの世界は好みではないし、似たモチーフなら、夏に観た「海のふた」のビターさの方がよっぽどしっくりくる。
(だって、もちろん狙いだと思うけど、お金と性の匂いがまったくしないのだもの。一泊いくらなら、一食いくらなら生計たつかなーって考えちゃうもの。)


でもやっぱり、なんや言うて、綺麗なものは綺麗なんだなーというか。どんだけひねくれてみても、あ、綺麗だな、とか、あ、おいしそう、とか、思ってしまうんだ。思ってしまったとき、「思ってしまった」ってきづいて、「そうだよなあ、綺麗なもの、見たいもんなあ」なんて思ったり。

いろいろな生き方とか選択肢とか見てきても、「おいしいものを食べて、好きなところで、好きなことをして、好きな人と暮らす」以上の幸せな生活は、やっぱり思いつかない。思いつかない。

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物語は、季節に則った連作短編的な構成。

全体を通した主人公のふたりの物語自体は、ほとんど語られない。ふたりの口数だって少ない。「前半は意味深な台詞だけ言葉少なめに話して、どうせ後半はどばーって説明すんだろ!」なんてひねくれてたら、徹頭徹尾、かれらは多くを語らない。

(夏と秋はもうちょいオリジナリティのある話にならんかったかなあ。と痛切に思うが、)そんな無口な姿勢がとても効果的で、素敵な余白を作ってた。終わってみれば、ほんと素敵だった。なにも語らなかったから、ふたりの決着のシーンがあんなにぐっときたんだろうなあ。これ、すごいな。語らないって大事なんだなあ。メモメモ。


矢野顕子さんの「ひとつだけ」にインスパイアされて執筆した本らしいが、この語らない姿勢のおかげで、この名曲のもつ普遍性も損なわれなかったように思う。

(でも、そのおかげで「たったひとつの欲しいもの」はネタバレだったけど、、)

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にしても、もう少し映像はなんとかならんかったかなあ。ベタ明かりにパンフォーカスで、連ドラかと思っちゃった。アングルもマ俯瞰・シンメばっかりだしなあ。
本当に徹底して清潔で、三島監督の存在・意図がちらつくほどだ。

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「誰かとパンを分け合いたくなった」的な感想なんか死んでも言いたくなかったけど、いますこし、誰かとパンを分け合いたい。
包丁で切るんじゃない。手でむしって、それを渡すんだ。「ありがとう」って言って、食べるんだ。