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クライ・マッチョのNAOKIのレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
3.6
おれの父とイーストウッドは同い年だった。

2人が高齢者の域に入るとなぜかなんの根拠もなく「イーストウッドが活躍してるうちは親父も大丈夫だろう」
不思議とそんなふうに思ってました。

おれの部屋には昔から「夕陽のガンマン」のポンチョを肩にかけた「名無し男」若き日のイーストウッドのポスターが貼ってあります。
おれが幼少の頃親父の膝で日曜洋画劇場のマカロニウエスタンを観た日々…

2008年…「グラン・トリノ」の衝撃!
自らが築き上げてきた「暴力映画」、そして無意識かもしれないが自分の中に確実にあった「人種差別」…自分の人生に向き合いまるで「ケジメ」をつけるかの如き傑作でした。

この映画を観た時「ああ…イーストウッドは死ぬんじゃないか?」本当にそう思いました。
なんとそれから10本以上撮るなんて…
なんてジジイだ!(笑)

2020年父は90歳で他界しました。
残念ながらイーストウッドには敵いませんでした…

そして今回の「クライ・マッチョ」

91歳になるイーストウッド…監督・主演…

流石にもう老いは隠せない…観ていくうちに切ない気持ちになってしまいます…

流石に老けた(泣)
もう歩くのがやっとに見える…スタントマンと編集でアクションらしきシーンを見せるのが精一杯で演出にも以前の切れ味はもう見られない…

登場人物たちの心の動きやストーリー運びが「もたもた」して見える。
前の数作から急激に腕が落ちたように見えてしまう…

そうなのだ!これが91歳のイーストウッドの監督・主演の限界なのだ!
おれには…とてもじゃないが面白くないとか心が動かないとは言えない!

あの歳でこんな映画を作っているのだ!
素直に「すげえ」と思う。

この元カウボーイは動物好きで動物に好かれるという不思議な設定…「おれはドリトル先生か?」のくだりが1番面白かった…

闘鶏雄鶏の「マッチョ」がイーストウッドから離れない…焚き火の前で寝そべったイーストウッドの上に飛び乗ってご機嫌…荒野を歩く時ちゃんと隣りを歩いてついてくる!
彼の車の脇を数頭の馬が全力疾走で並走する(いったいどうやって撮影したのか?)
こんなグッとくる奇跡のようなシーンをまだまだ撮れるのだ!この爺様は!

そしてイーストウッドは少年ラフォの母親から誘惑されたりダイナーの女主人とお互いの一目惚れのように恋に落ちたりする!
おいおい、いくらなんでも91歳でヨボヨボの爺様がメキシコ女にモテモテというのは無理があるだろう?

監督はイーストウッドに忖度しすぎだ!
あ!監督は本人だった!(笑)

1995年の「マディソン郡の橋」で人妻と不倫するカメラマンを自ら演じて「ジジイすぎるだろ!」と叩かれてから27年だよ!

ホントにとぼけたジジイだよ(笑)

これが遺作なんて嫌だからな…
100までにあと10本くらいボケボケの映画を作ってくれ…絶対観に行くからさ
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