yukihiro084

クライ・マッチョのyukihiro084のレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
3.3
全てをさらけ出していた。

まず、そこに驚く。
たぶん、クリントもわかっている。
自分の老いを。その弱々しさも。

クライ・マッチョ。
見たかったやつ。

曲がった背中。弱々しいパンチ。
緩慢な動作。すっかりお爺ちゃんだな、
と、見ているみんなが思ったろう。

もちろん、クリント自身も思ったろう。
すっかりお爺ちゃんだなって。
それでも、
クリントはカメラの前に立った。

思えば、クリント・イーストウッド作品
は暗い作品が多い。演じる役は、まぁ
たいがい孤独だ。自分の育ってきた作品
や演じてきた役柄を否定するような作品
があったりもする。それはまるで、
贖罪の旅のようにも見える時がある。

許させざる者で、自分を育てた西部劇の
世界の暗部を描いたように、ミリオン
ダラー・ベイビーで、非力で弱い人物を
演じ、重たい十字架を背負ったように、
キャスティング自体が伏線のようなラスト
を用意していたグラン・トリノのケリの
つけ方がそうであったように。そこには
『やれよ、俺を楽しませてくれよ。』と
怖い者なしの男の姿はもうない。

映画は全てが、すんなり進む。
バリアフリーが行き届いた施設のようだ。
キツイ階段もデコボコも障害物もない。

元雇い主の息子をメキシコから連れて
帰る。それがクリントのミッションだ。
(まぁ、よくクリントに頼んだものだな)
と、観ている人間は思う。治安の悪い
メキシコの街を彷徨うのかな?と思ったら、
すぐにその息子は見つかる。衝突を繰り
返したり、逃げられたり、追いかけたり
するのかな、と思ったら、その息子は、
素直にクリントの車に乗ってくる。
胡散臭い(悪そうな奴ら)が登場。
マシンガンで寝床を襲われるのかな、
とか、追手とのカーチェイスが始まる
のかな、と思ったら、まぁ、それもない。
どちらかと言うと、僕の大好きな、
{世界最速のインディアン)のバート・
マンローみたいな旅を思い出させる。
なんなら、マイケル・J・フォックスの
(ドク・ハリウッド)でもいい。

そんなクリントの旅だった。
クリントは最初からそんな
偏屈爺さんでもなかったし、
キーとなる元雇い主の息子も
手もつけられない暴れん坊でもなく、
むしろ、最初からいい奴だったし、
最初から2人は仲良くしてたんだ
けど、まぁ、いい作品でしたよ。

もう少し、山場が欲しいは欲しい
けどね。

アレクサンダー・ペインの(ネブラスカ)
のブルース・ダーンの方がいろいろ
あったし、元気だったように思う。
yukihiro084

yukihiro084