このレビューはネタバレを含みます
サスペンス。
記憶を追体験して謎を追う。
答えは全て過去にある。気づかないだけで、そこにある。
それを第三者の目で確認することで「見えて」くる。
メビウスの輪のように、他人の記憶を巡り、繰り返す。
そして「今」にたどり着く。
それだけでは足りないからまた記憶を追う。
水は「記憶」の表れ。
膨大な量と奥底に沈むように忘れた記憶。
次々増えては洪水のように溢れる。
そんな皮肉を例えている。
屈折率で底にあるものが見えない場合もあるため、
見方を変えて探す。
ニック(ヒュー・ジャックマン)は「過去」を選んだ。
しかし「物語」には終わりが必要である。
ギリシャ神話の「オルフェウス」は冥界から地上に戻る際、
言いつけを破り、妻と地上に戻ることはできなかった。
一人地上に戻ったオルフェウスは悲しみから立ち直ることはできず、
悲しみのまま死に、冥界で妻と再会したとされる。
しかしニックはまだ生きているので物語の幕引きができない。
悲しみの中にいる最中である。
その幕引きを「未来」に託し、悲しみのままで終わらせないためにも
過去を何度も何度も巡っているのではないだろうか。
冥界で再会するメイ(レベッカ・ファーガソン)のために。