ピエール・ピノー監督、2作目の長編。
大女優カトリーヌ・フロ主演作。
カトリーヌ・フロが出ているというだけでもう鑑賞決定。
才能溢れるバラ育種家(ローズメイカー)エヴ(カトリーヌ・フロ)のバラ園に
助手?のヴェラ(オリヴィア・コート)が、職業訓練所から格安で雇える3人組を受け入れる。
前科者の青年、定職につけない初老男性、異様に内気な若い女の子。
全くの素人で世間からのはみ出し者と
頑固なローズメイカーの心温まる物語。
花を育てる大変さや、美しさを愛で、
登場人物たちがぶつかりつつも打ち解けていく真面目な話かと思いきや
バラ園は倒産寸前、
とにかく新種を開発して、コンクールで優勝しなければならない。
カトリーヌはメンバーを見て、とんでもないことを思い付き、ストーリーは躍動する。
青年フレッド役のメラン・オメルタは
ラッパー出身で現在も活躍中の俳優。
ここで歌ったりはしないが、
代わりに嗅覚が良いという才能をエヴに見出される。
おじさんサミールはファツァー・ブヤメッド
おとなしいナデージュはマリー・プショー
アンバランスな3人組が、愛おしい。
オリヴィア・コートの真面目なキャラも映画を締めている。
カトリーヌの元の穏やかで優しそうな風貌をよそに
パイプを嗜んだり
頑固さと気高さが宿っているのがやはり素敵で奥深い。
そしてフランス屈指のバラのスペシャリストたちが監修した
カラフルで豊満なバラ園は眼福。
彼女の持つ木箱には様々なバラの香りの小瓶が入っている。
リンゴの匂い、紅茶の匂い、オレンジの匂い、革の匂い…
植物には芳香成分と呼ばれるものがあり
だいたい多くて数十~百種ほど含まれる。
しかし、バラの香気成分は現在で500種以上識別されていて、いまだ解明されていない微量成分があるといわれている。
なのでそれを合成で再現することはできない。
安価な“ローズの香り”が全くバラの香りに似ていないのはそういうことである。
バラの香りはとても複雑だし、深みがあり、高貴なのだ。
だから老舗香水ブランドはバラ園を自社で持っていることが多い。
香りを嗅いで言い当てるフレッドの言葉から、その香りを想起し、それを重ねながら鑑賞するという不思議体験。
実際の香りを体験できたらよいのだが
4DXで香らせるには鑑賞料金が跳ね上がる可能性が(笑)
栽培にはタイムラグがあるので
新種開発までにもお金を作らなければ潰れてしまうし、給料ももらえない。
3人がアイデアを使ってバラを販売する姿が微笑ましい。
不良青年の周囲に売れそうな気配はまるでないが
意外に売れてしまうエピソードが好き。
内気なナデージュがここぞとばかりにハッキリ言うところとか
ファツァー・ブヤメッドの感情を表す表情も愛おしい。
そして何よりエヴとフレッドの間がすごく良い。
「才能と好きなことが違うこともある。無理に続けなくていい」
「美のない人生は虚しい」
彼女が言う名言は説教くさくなくて沁みる。
繊細で苦労の多いバラの交配や栽培については少し大まかだったのは物足りないものの(あと野生種が好きだったりする)
代わりにバラの香りの魅力に触れてくれたのが、良かった。
いったいどんなバラができるのか
はぐれ3人組はどうなるのか
ちょっぴり意外な進行とともに嬉しい誤算。
2021レビュー#105
2021鑑賞No.201/劇場鑑賞#13
題材的に女性向きとは思いますが
何気にアロマ男子は世の中に結構居ると思っています😏
小さく可愛い表紙に惹かれ思わずパンフ購入。
裏表紙で同じ感動を味わえたのも嬉しかった😳🌹