のうこ

羽織の大将ののうこのレビュー・感想・評価

羽織の大将(1960年製作の映画)
3.5
桂小金治の事故シーンについて。
映画における人物が道路を横断するシーンは観るたびにひやひやするものだが、桂小金治は例によって、あっさりと車に轢き殺される。映画の冒頭、道路側を歩くフランキー堺の横から車が突然飛び出してくることで映画が始まる。車の運転手は大学時代の友人藤木悠であり、フランキー堺を途中まで車で送る。車から降りたフランキー堺は道を横断しようとするが、車や路面電車が行き交い、前に出ようかと思えば前から車が通り過ぎ、後ろに下がろうとすると車が後ろを通る。通り過ぎる車に驚きながらもフランキー堺は道路の向こう側へと消えていく。これと全く同じことが桂小金治の事故シーンで再現されていて、別にすごいシーンではないが、明らかに何か変なことが起きている。桂小金治が道路を渡ろうとすると前から車がきて、後ろに下がろうとすると後ろから車がきて、前から車が来て轢かれてしまう。フランキー堺は道路を渡ることができたが、桂小金治は道路を渡りきることができなかった。笠原良三の脚本でどこまで書かれていたのか気になる。

落語家として落ち目となったフランキー堺、団令子の中華料理屋にさす光。桂小金治の葬式、遺影の前で落語をするフランキー堺と出席者を俯瞰でとらえたショットのエモさ。なんてことないショットだが。ラストの団令子がフランキー堺のもとから去っていく場面も見事。
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