Mikiyoshi1986

暗くなるまでこの恋をのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

暗くなるまでこの恋を(1969年製作の映画)
3.8
フランスを代表する2大俳優ベルモンドとドヌーヴ、そして監督にはトリュフォーという豪華メンツで制作された愛の逃亡劇。

ポランスキーの「袋小路」「反撥」と同様に、トリュフォーも「柔らかい肌」と本作で姉妹それぞれを起用しています。なんと贅沢な…!
ベルモンドは姉ドルレアックと「リオの男」で共演してるし、その辺を相関図にしたらなんか面白そう。

ヒッチコック風味のシリアスな展開でも、どこか軽快なテンポでコミカルに映るのがいかにもトリュフォーらしい作風です。

「それは結局スルーなんや…」という置き去りの伏線も多々ありますが、最終的に彼が描きたかったのはミステリーでもクライムサスペンスでもなく、
結局はトリュフォー自身が生涯をかけて訴え続けてきた「愛の尊さ」、それに尽きると思います。(実際トリュフォーとドヌーヴは本作で恋仲に…)

かつての彼の盟友だったゴダールが同じくベルモンドを主役に迎えて監督した「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」のように、
本作では男女の愛憎、殺人、金、逃避行or逃亡、裏切り、死…etcという共通のプロットを多用しています。
というか、そもそも「勝手にしやがれ」ってトリュフォーの原案だしね。

ちなみにこの頃のゴダールは左傾化して非商業映画に入れ込んでいた時期でもあった為、ヌーヴェルヴァーグを先駆した二人は五月革命を前後して袂を別つこととなりました。

前述したゴダールの2作品では裏切りと破滅に満ちた男女の末路が描かれましたが、本作ではある種の希望が提示されます。
ラストに用意されたのは生涯を通して愛に生きた極めてトリュフォーらしい結末であり、
これは疎遠となったゴダールに捧げるアンサー映画と云えるのかも知れません。
本作を通して愛の脆さと強さを伝え、互いの共通項で以てかつての同志を救済しようとしたのかも?とか思うとかなり胸アツです。

そして本日4月9日でジャンポール・ベルモンド、83歳を迎えました。
まだまだずっと長生きして、再度スクリーンにカムバックしてほしいです。
Mikiyoshi1986

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