通りすがりのいがぐり

アレックス STRAIGHT CUTの通りすがりのいがぐりのレビュー・感想・評価

アレックス STRAIGHT CUT(2020年製作の映画)
5.0
唯一無二の作家性と狂気を描く事に長けた奇才ギャスパー・ノエ。彼の作品はどれも他の色彩に当てはまらない攻撃的な"赤"とそれを際立たせる点滅がある。このアレックスもその一つだがこの映画は人の心を喰い殺しに来てる。自分はまだ彼の映画を4作(LOVE 3D・エンダーザボイド・ルクスエテルナ・アレックス)しか観たことがないが、このアレックスこそギャスパー・ノエの集大成とも言える酷く不愉快で興味深い映画だった。

前半で描かれる1人の女性アレックスの身に起こる余りにも最悪な事態と後半からの怒涛の最悪な展開までノンストップで描かれるが、今回はスターライトカット版と謳われておりどうやらオリジナル版だとエンドロールから始まるという逆行から進んでいく特殊な構成だったものを普通の構成にしたようだ。観終わった後だとオリジナル版とこのスターライトカット版で受ける印象も確かに変わるなというのが納得できる。もちろんどちらも胸糞悪いという第一印象には変わりないが今作の伝えているメッセージの受け取り方が180度変わるだろう。同じメッセージだが編集が変わればここまで意味合いが変わるのも珍しいことだ。実に面白いが最悪であるのは変わりない。

ハッキリ言ってこの映画はあまりに危険すぎるしオススメしたくない。中盤からの強姦を含む描写の数々は不愉快だし観終わった後はこれでもかと落ち込む映画だ。しかし、あなたがどうしてもギャスパー・ノエという恐ろしい才能を目撃したいのであれば責任の一切は持たないが是非お薦めしたい。少なくとも自分は確かに嫌な気分になったが改めてギャスパー・ノエの恐ろしさに触れることができて嬉しかった気持ちもある。やはり彼は昔から狂っていたと確信できたから。