フィルモワ

パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフのフィルモワのレビュー・感想・評価

3.5
すべては神聖

私は一個の剥き出しの魂を見た。スクリーンの、ステージの上に。パティはきっと、その顔にくしゃっと皺を寄せて否定しそうだけど、このフィルムを観た後ではどうしたって、現代の聖者という印象を禁じ得ないでいる。その削ぎ落とされた輪郭。隣人はもちろんのこと、遠い異教徒へも向けられた愛。生命の尊厳に対する祈りと怒り。極めつけが、サタン(=ジョージ・ブッシュ)の糾弾。条件は揃いすぎているではないか。

彼女の表現は、余分な贅肉をまとわないだけ通俗から離れるが、実はとても極められ、普遍的なもののように思えた。今にも消え入りそうな儚げな風貌とは裏腹に、何世紀にも亘ってその存在を残すであろう、ある種の渋とさ。か細くも強い詩人の姿に、魂の居住まいを正す。

余談:鑑賞後なぜだかふとマドンナを思い出し、ポップスとパンク、それぞれに女王の名が冠せられているこの一見対照的な彼女たちを、比較するのも面白そうだと思った。