回想シーンでご飯3杯いける

モキシー ~私たちのムーブメント~の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

4.3
たまたま国際女性デーに投稿する事になったけど、既に数日前に鑑賞済みのフェミニズムを題材にしたNetflixオリジナル作品。

アメフト部の主将による女性差別的な行動に疑問を感じていた女子高生の主人公が、マイノリティとしての強い姿勢を持つアフリカ系の転入生に刺激され「モキシー」として匿名で女性解放運動を始める話。モキシーは俗語で勇気を意味する言葉だけど、響きがどこかバンクシーっぽく、グラフィティや手書きのビラでメッセージを投げかける手法を取り入れる点でも、バンクシーを強く意識しているように思う。

原作、監督ともに女性である事も関係しているのか、男性は主にアメフト部の差別野郎しか登場せず、あくまで女性側のスタンスや、同性内でも人種等の立場が違う事によって微妙に行動原理が変わってくる点を描いているのが特徴。

また、主人公の母親が元パンクスで、若い頃に男達を敵に回して戦っていた事に触れているのも面白い。母親のルーツに感化された主人公も同じようにパンクのライヴを楽しみ、音楽を媒介にしながら同志と団結していく姿がパワフルかつキュートで、何とも魅力的な作品に仕上がっている。それから、登場人物のファッションがとてもカラフルなのも印象的だ。

最近、フェミニズムを題材にした映画が急に増えたように感じる人もいるかもしれないけど、本作でも語られている通り、世界レベルで見れば、このテーマは'70年代辺りからずっと取り沙汰されてきた大きな動きであり、SNSや映画のネット配信によって日本のように立ち遅れている国でもようやく可視化されるようになったという事なのだと思う。そうした経緯を含め、フェミニズムの歴史を分かり易く描いた、とても秀逸な作品だと思う。