カツマ

CUBE 一度入ったら、最後のカツマのレビュー・感想・評価

CUBE 一度入ったら、最後(2021年製作の映画)
3.5
トラウマは加速する。まるで罠に嵌められたように、閉じ込められた人間たちは定めのように俗物となる。そこは絶対に脱出不可能な場所。先へ進めばトラップが待ち、謎めいたまま死の予感だけが漂う。なぜ?どうして、そこに彼らは閉じ込められてしまったのか?何も分からないまま、ただ恐怖だけが伝染していった。

ヴィンチェンゾ・ナタリの傑作『CUBE』の日本版リメイクは、ナタリの公認という形でその看板を背負うことになり、つまりは初の公認リメイク作品という触れ込みで世に出ている。豪華俳優たちをキューブの中に閉じ込めて、そこにある人間たちの業のぶつかり合いがいつしかサバイバルへと発展していくという展開は原作と同様。だが、結末は日本独自の物語へと改編されており、そのあたりで評価が分かれそうな作品でもある。映画愛好家なら誰もが好きな映画のリメイクだけに、ハードルが高くなってしまうのは致し方ないことだろう。

〜あらすじ〜

とある男が目覚めた場所は四方を囲まれた立方体の部屋の中。その部屋を出るとまた同じ部屋が待ち受けており、男は部屋に仕組まれた罠にかかり命を落とした。
一方、それとは別の立方体の部屋で、後藤裕一は目を覚ました。その部屋にはすでに越智真司、宇野千陽の二人がおり、千陽に関してはまだ10代の子どもであった。そこに立て続けに井出、甲斐の両名が現れて、計5人が一つの立方体の部屋の中に集うこととなった。井出はどうやら部屋に罠がかけられていることを知っており、革靴を投げ入れることで罠を回避しながら出口を探しているようだった。すると、四隅にある扉から罠にかかった男性の死体が落下、5人は自身も死ぬ可能性があることに戦慄し、先に進んでいく井出の後ろをついていく形で立方体の部屋を突き進んでいくことになり・・。

〜見どころと感想〜

何故、賛否両論が巻き起こることになったのか?正直、全体的にはそこまで悪くないリメイクであると思うのだが、大方の予想通り、日本独自の改編が良くない方向に働いている。主人公の過去とのリンク、そして、チープなセリフとご都合主義な罠。特に大袈裟なセリフは完全にCUBEの世界観を壊しており、日本映画の悪習を増やしてしまっている。だが、特に前半部に関してはCUBEのリメイクに相応しいクオリティなので、後半での失速がやや惜しい作品だったと言えそうである。

配役陣はかなり豪華で、主演の菅田将暉を筆頭に、杏、斎藤工、岡田将生、吉田鋼太郎など、演技派をズラリと揃えてきている。特に岡田将生、吉田鋼太郎の存在感が素晴らしく、物語のバイプレイヤーとして効果的な演技を披露した。菅田将暉、杏らの演技力が発揮されなかったのは、やはりキャラ付けが合っていなかったのと、チープな台詞のせいだろう。斎藤工は嫌な奴かと思いきや実はそうではない、というギャップがなかなか粋ではあった。残念ながら子役は特にインパクトは残せず。もう少し演技力の高い役者でも良かったかもしれない。

人物像を掘り下げるのか、それとも全く掘り下げないのか。どちらかに振り切った方がCUBEという作品の良さを引き出せたのではないかと思う。撮影や演者たちは原作の看板を持ち上げようと奮闘しているだけに、脚本の雑さがとにかく勿体ない作品でもあった。後半部の回想シーンをバサッとカットして、ある人物をもう少し機能させれば、、という気持ちはありますが、やはり一番改めるべきは、携帯小説ばりのセリフなのかなという気もします。脚本を改変して、更なる再リメイクでCUBEの看板を持ち上げ直してみてほしいですね。

〜あとがき〜

前評判があまりよくなかったので、ある程度期待値を下げて鑑賞。そのせいか案外楽しく見ることができました。CUBEの原作要素はやはり面白いのですが、日本独自の色を出そうとすると微妙な方向に行きますね。岡田将生とかかなり良かったんですが、他は菅田将暉や杏じゃなくてもいいのでは、、?という瞬間は多かった気がします。

CUBEという映画はナタリが創出した一種の発明。どんなに頑張っても原作を越えることはないだけに、日本版CUBEが見られただけでも嬉しい驚きだったのかもしれません、ね。
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