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スプートニクのhorahukiのレビュー・感想・評価

スプートニク(2020年製作の映画)
3.6
寄生か共生か。

1983年、ソ連の宇宙船が突如連絡を断ち墜落。乗組員2人のうち1人が死亡。宇宙で何があったのか…。その時の記憶がないと語る生存者コスティヤは、宇宙空間から「何か」を地球に持ち帰っていた…って感じのSFホラー。

「何か」ってのは勿論エイリアンなんだけど、宇宙から持ち帰ってしまうのは『原子人間』等でも描かれた良くあるSF設定。本作がユニークなのは、エイリアンはコスティヤの体内に潜み、深夜帯にだけ口から外に出て、明け方までにはまた体内に戻っていくところ。そしてエイリアンの寄生によってコスティヤの治癒能力は異常な進化を遂げており、お互いに共生関係を築いている。

このエイリアンはペルソナ的存在で、コスティヤが過去に犯した罪と罪悪感を象徴したもの。宇宙という彼にとっての罪そのものとも取れる場所からそれを持ち帰り、内に宿す。1983年のソ連という宇宙開発競争の時代に舞台が設定されていることからしても、宇宙を罪の場所とする意図は読み取れる。

宇宙開発競争の時代では宇宙飛行士はヒーローと呼ばれており、コスティヤも自身をヒーローと思っている。真のヒーローとは何か。それは自身の中の負と向き合う強さだと本作は訴えかける。負と向き合うのは怖い。その恐怖を克服してこそヒーローとなる。そしてそれは国としての転換期にあったソ連を舞台にしていることにもリンクする。

…というところまでを見た当時に書いたんだけど、割と面白かった記憶。未体験ゾーンだからすぐ登録されると思ってたら全然登録されないもんだから書かずに放置してたやつ。細部は良く覚えてないけれど、『アトラクション侵略』の脚本家らしいというか何というか色んなところからのコラージュ感溢れる作品だった。ただ、せっかくの寄生エイリアンでビジュアルもなかなかなんだから、ペルソナ的にするよりも単純に暴れまくってくれた方が好き。
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