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14歳の栞のSWDのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
5.0
凄すぎた…とんでもないもの観てしまった。人生で一番没入した映画かも。自分にとって、"他人"の見え方自体が鑑賞前と観賞後で変わってしまうような、それくらいの衝撃。自分ももっと"他人"と向き合ってくれば良かった…とこれまでの人生を後悔さえしてしまう、危険な映画だ。。

まず驚いたのは、35人の人生を切り取った膨大な素材量(とそれを2時間に収める編集量)。中盤まで脳の処理が追いつかなくてクラクラしっぱなしだった。まずどうやって撮ったの!?ていうか(この後もそれぞれの人生が続くのに)そこまで見せちゃっていいの!?という。

ドキュメンタリーは数あれど、ここまで起きた事象に対して中立に徹した映像作品は無かったのでは?
中学2年生の3学期という、始まりでも終わりでもない時間を切り取るという企画からしてそうだけど、恋愛、不登校など「物語」として成立しやすそうな"事件"とそれ以外の"日常"が、全て同じくらいの尺×35で並列に並べられてる作りにも驚き。
カメラや人間の編集が介入した時点で100%のリアルではなくなる、というドキュメンタリーそのものが持つ問題点を極限まで排除しようという試みのようにも思えた。
僕はしばしば、街ゆく人々のそれぞれに20歳なら20年、60歳なら60年の人生があったんだよな、と考えて気が遠くなることがあるのだけど、この作品はまさにそれの14年×35人版を2時間に圧縮させたものを見せられたという感じ。納得しかなかった。

最後に青春映画としての素晴らしさ。徹底した中立性で、青春のキラキラした時間だけを記号的に切り取ったり、大人がノスタルジーに浸るだけのポルノ的な作品とは一線を画している。むしろ大人視点で観ると学校という空間の異常性が改めて際立つような作りにもなってるんだけど、最後まで語り口はお涙頂戴でも教育批判でもないニュートラルなものになっていたのがドキュメンタリーとしての意地を感じた。

学校という空間が好きだった人も嫌いだった人も絶対何かしらの感情が想起される作りになってるので、100人いたら100通りの感想が出てくる作品だと思う。全ての14歳を経験した人達に観て欲しい一本。
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