タカ

14歳の栞のタカのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
-
すべての動物に訪れる"子供から大人になる瞬間"

もう風化してしまった記憶の中の同級生
14歳の頃の自分を思い出そうとしたら、思いのほか記憶が薄れていた
あの時に一緒の時間を過ごした同級生
彼・彼女らをどれほど分かっていたのだろうか
田舎のため4クラスだけだったけど、全員と話したことはあっただろうか
思春期のセンシティブな期間だったはずなのに、鮮明に記憶が残っていないことに少しばかりのショックを覚えた
栞を挟む位置は現在進行で動いていて、過去を読み返しても思い出したいページに行き着かない
あの時の瑞々しい感覚、感受性
この映画を観た今、同期してみたい

とある中学校に在籍するとあるクラスの中学2年生のに密着したドキュメンタリー
35人全員を余すところなく描く濃密な120分
いや、どうせならもっと観たい
それほどまでに惹きつけられるものだった
大河ドラマが伝統的に継続しているように誰かの人生を見届けるのには絶対的な魅力がある
私たちが日々必死にもがいているように
他の誰かも同じようにもがいている
その人生の一片を垣間見るのだからそれは目が離せない
他人がもがく姿から目を背けるのなら、自分はもはや死んだようなものなのだから…

「リセットしたい」
トラウマを抱えて積極的に交友することに抵抗を覚えている子がいる
クラスが良い雰囲気になるためには自分を殺せば良いと思っている子がいる
自分が楽しいと思うから楽しいという考えのもと盛り上げようとする子がいる
そもそもクラスに興味を持たない子がいる
同じクラスだからだといって感じることは当然同じじゃない
14歳の僅かと思える経験の中でも試行錯誤してコミュニティの中での生き方を探っている
あぁ変わんないなと率直に思う
人との交わり方に正解なんてなくて十人十色のアプローチがある
経験則からトライ&エラーを試みるのはもう大人

「将来思い出すこと、2つあって迷ってます」
14歳特有の悩み
将来の夢、人生設計
スポーツ選手になりたいけど客観視して諦めるしかない現実
堅実すぎる未来を設定
誰が誰と付き合っているか
バレンタインデー、ホワイトデーの贈り物・告白
もう戻らないなぁと思う
その時特有の感情の揺れ動き
子供っぽく見えるけどその時だけの大切な葛藤
ああ瑞々しいなぁ

人生の一片
卒業を映画のゴールにしないための14歳
ストーリーとして消化させないための切り取り
キレイなエンディングは求めていない
「別れって儚いよね」
「どうして?」
「お別れのメッセージを書いた色紙を渡したら、片手で受け取ってありがとう、だってさ」
「それは儚いね」
達観したような気になった会話だと思いきや、確実に芯を食ってる内容
大人と子供の狭間

出演者のことを考えると絶対に円盤化されない映画
映画館でしか鑑賞手段がないので
観ることができて良かった
あの時に咲く桜をおぼろげに思い出しながら
タカ

タカ