蛇らい

Arc アークの蛇らいのレビュー・感想・評価

Arc アーク(2021年製作の映画)
3.5
序盤のリナがコンテンポラリーダンスをするシーンから、足で弧を描くような振りを見て本気だなと確信する。

ボディーワークス技術のルックの再現性は、オリジナリティとリアリティが共存し、SFとしての説得力を高めている。同様に、ボディーワークス技術に対する一般の人々のリアクションが、ドキュメントのインタビュー形式で演出されている。このシーンを挿しこむか、しないかでは大きく異なる。

また、監督は、何を映すか映さないかでもSFとしての完成度を高めるために重要だと語る。例えば、パソコンやスマホなどの時代性、世界観を固定してしまうものを避けることで、リアリティを出し、予算も抑えることができる。

生と死という一見隣り合わせのように捉えられている概念を揺さぶる脚本も見事だ。死は生の対義ではなく、生きることの中に組み込まれているという指摘の鋭さを見せる。

身体を治療する、美容によるアンチエイジングをするという行為は死を否定することと同義なのではないかという疑問も同時に浮かび上がる。不老不死を選択しなかった人々も、死を受け入れようとはしていないのではないかという矛盾も内包する。

鋼線でガチガチに固められた一輪の花や、長生きのシンボルとしての亀を、ペットのように紐で繋いだ不老不死へのメタファーとして登場させている。

生と死の二面性を的確に描き分け、SFに説得力と共に落とし込めている稀有な作品だ。不老不死という文明の生命への対抗は絶対ではない。貧富の差、人種、性別、身分に関係なく平等にやってくるものである。ならば、少なくとも大切な人とは一緒に始めたように、順序があろうと一緒に終わりを迎えたいものだ。
蛇らい

蛇らい