描かれていないことの多い映画だなと思った。余白が多分にあるから、考え想像しながら観る映画だったと思う。
不老化処理が当たり前となった世界では、出生率は低下し、自殺者は増え、処理をしない選択に理由が求められる。･･･そうなるだろうなぁと思った。寿命が延び死が遠退く程、命は循環しなくなるだろうし、果てしない生に時間をもて余す程に、絶望は濃くなるだろうし。老いないことが当たり前となれば、1本の白髪がもたらすものは死への入り口。死への恐怖は増幅するんだろうなと、あの絶叫を聞いて思った。
一方で、老齢と死の克服が叶ったら、年齢という呪縛から解放されて、年齢に関係なくやりたいことをやる人が増えるという良い影響もあるかもしれないな、とも思った。身体が若さを保ったまま多くの経験を積み重ねることで生まれる新たなこともあると思うし。年齢を重ねる程、健康が一番って感じるから(笑)、“若さ”が魅力的なのも分かる。
でもなー･･･見た目が変わらないって、時間が経過していないようで、やっぱり違和感。100才のリナが30才のリナと同じ姿のままであるのを観て、『椿の庭』の絹子の顔に刻まれた皺を私は美しいと思ったな、ということをふと思い出した。
映画は、SF小説が原作なので、現実味のない話ではあったけれど、もしも･･･を想像するにはまあ良かったんじゃないかなと思った。
#65_2021
