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デカローグ デジタル・リマスター版のkyokoのレビュー・感想・評価

4.2
昨年のポーランド映画祭から始まって、ようやく全10話完走。
少ないセリフや挙措から背景を推し量るのが大変だったり寝ちゃったりで正直咀嚼しきれなかった回があるのが悔やまれる。

ワルシャワ郊外の巨大団地を舞台にして十戒になぞらえた物語は、倫理的にそれどうなのよと思うものもあれば、とことん残酷なものもある。一見人間の愚かさへの皮肉に満ちているようでいて、最後にはエゴや孤独や後悔に喘ぎながらそれでも生きていかねばならない人々への、キェシロフスキのこの上ない愛を感じさせた。

あらゆる角度から捉えられた無機質な団地の無数の窓には、愛と憎しみ、嘘と真実、失望と希望、生と死が浮かび上がる。作品によってカメラマンを変えたという試みとキェシロフスキの演出が、単なるテレビドラマを芸術作品に昇華させていた。

ほぼ全回を通して登場する男と、回を跨いで登場人物たちが交差するのを発見するのが楽しかった。
もう一周したいなあ。
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