停滞

獅子座の停滞のレビュー・感想・評価

獅子座(1959年製作の映画)
4.0
楽しいかと言われると劇的プロットが組まれてないからあれだけど、遺産相続をミスったピエールの放浪は人間らしさを感じる。そしてゴダールが出てたり圧倒的なロケ撮影、靴が壊れたりパンを盗もうとしたり染み抜きに失敗したり、この袋小路感が即興演出されてるっぽく、57年に作られたというヌーヴェルヴァーグの胎動を感じさせる作品。

勝手な解釈だろうけど、友人を頼ったり軽い盗みをしたり物乞いをしたりで定職について働こうという意思が欠如した人間の放浪は、一種の資本主義社会へのNOと受け取れると同時に、職につく事で(現代の階層的組織での職なら自然な感情の発露を抑制され剥ぎ取られる)無条件に与えられる型、それがないことで人が遭遇する偶然・非定型なもの、また根源的なものをみっちり感じることができたと思うのです。こういうの好き。
停滞

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