菩薩

獅子座の菩薩のレビュー・感想・評価

獅子座(1959年製作の映画)
4.5
牡牛座?獅子座?いいえ、私は蠍座の男、毒はない、金もない、夢も希望もない。

今まで観てきたロメール作品とはまったく似通っておらず(バカンスシーズンの悲哀という点では『緑の光線』が近いのかもしれないが)、こんなガチンコリアリズム観せられたら逆の意味で生きるの辛くなってリスカしたくもなるけど、今の自分にはぴったりすぎる作品で、顔で笑い心の中で号泣した。星占いを信じるほど乙女チックでも無いが、やっぱり人生は運に支配されてるとこがあると思うし、美しさの裏には汚らわしさがあるし、光の陰には闇があるし、幸せの根元には誰かの不幸がある、これはそんな「つらたん」の部分に光を当てるような作品で、からこそ最後の御都合主義的棚ボタ着地も受け入れる事は容易である。普通から金持ち、金持ちから貧乏、そしてルンペン、そんな彼に手を差し伸べるのはやはり同じ境遇の人間で、彼はもうある意味「達してる」感のある存在であるが、人生に固執するとなるとやはり必然的に金銭と言うのが追いかけてくる。良くも悪くも金だし、金が悪い存在だとは思わないし、金が無ければ心も体も余裕が生まれないし、金があれば人より掴めるはずのチャンスも増えていく、そう金なんだ、金なんだよ…。金星に見放され、金銭運にも見放され、やることも無くトボトボ歩くしかないピエール、その靴先には穴が空き、それを繋ぎ止める紐も切れ、心に穴が空き、生きる希望も切れ、そんな彼が見つめる水面が光を放つ…。辛いよ!厳しいよ!悲惨だよ!でもこれが面白いんだからしょうがない。突然の空撮からのグーグルアースの先駆けみたいなシーンには驚いたし、やっぱり水面に浮かぶパン(?)みたいのに石当ててやっと手にしたら中に水入っててボロボロのシーンではもう辛すぎて7万本脱毛した。再び希望を手にしたピエールとあの最強ルンペンの行く末が気になるところだけど、多分こいつまたやらかしそうな気がする。
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