KnightsofOdessa

邪魔者は殺せのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

邪魔者は殺せ(1947年製作の映画)
3.7
No.200[負傷した現代のオデュッセウスが押し込められる事なかれ主義の監獄] 75点

ジェームズ・メイソンは大好きな俳優の一人であるが、私が好きなのは声とその表情であって、本作品のメイソンは常に顔色が悪く作中を通してほとんど言葉を発さない。まぁそれでも十分魅力的ではあるのだが。

IRAの支部長であるジョニーは資金調達のために仲間と強盗を働くが、逃走に失敗して会計係を撃ち殺してしまい、自身も左肩を撃ち抜かれ仲間とはぐれてしまう。仲間はジョニーを探そうと躍起になって死亡または逮捕され、警察はジワジワと包囲網を狭めていき、ジョニーは隠れ家への道のりをオデュッセウスのごとく旅をする。ジョニーは成り行きで様々な人間に助けられるが、IRAの幹部で殺人犯となった彼には居場所がなく、人々は恐怖と事なかれ主義から善意の範疇で彼を見放す。最後までジョニーを思っていたキャスリンと共に撃たれるという必然的なラストシーンには、これまでジョニーを見放すことなく彼に向き合った神父、公安刑事、シェルという爺さんが残る。

リードは本作品で認知され、後に名作「第三の男」を撮ることになるのだが、その片鱗が本作品にも見えている。夜の街の逃走劇で走る影を大きく映したり、暗く長い道を走る男のショットなど、まんま「第三の男」でパクっているシーンがあったりする。また、脱獄犯であるジョニーが都会の無機質さに目眩を起こすシーンやアワの中に幻影を見出すシーンなど、当時のカメラ技術が飛躍的に上昇したことが窺えるシーンが多いのも楽しい。後者のシーンは後に「タクシードライバー」や「アーティスト」でも再現されている。

また、ジョニーを取り巻く状況の悪化と共に天候まで雨から雪へと悪化する”感傷の誤謬”のような演出も素敵であり、モノクロでの雪の映え具合も最高。

でも、メイソンにはもう少し喋って欲しかったなぁ…